将来のきれいな歯並びのために 乳歯の時期に気を付けること

「まだ乳歯だけど、いつ頃から歯医者さんに相談した方が良いの?」
「きれいな歯並びを手に入れるために、乳歯の時期で後悔したくない」という方へ

こんにちは。
名古屋市千種区の歯医者、ちくさ池下歯科・矯正歯科 副院長・矯正医の河村智子です。

先日、日本口腔衛生学会より『乳幼児期における親との食器共有について』の提言が出されたことが話題になりましたが、ご存知でしょうか?

やはり大切なお子様には、虫歯のない健康な歯と、見た目がきれいでバランスよく噛める歯並びをプレゼントしてあげたいですよね。しかし、いつ・どんなタイミングで歯医者さんに相談すればよいのか分からないという保護者の方も多いのではないでしょうか。

乳歯のときは、食事や歯磨きの良い習慣を身につけることだけでなく、生え変わりによって健康な永久歯を手に入れる準備をするために、とても重要な時期です。乳歯の健康が、永久歯の健康や体の健康に繋がっているとも言えます。

この記事では、「乳歯の時期に気を付けるポイントについて知りたい」という方に向けて、乳歯列期のトラブルや、気を付けるポイントについて歯科医師が詳しく解説していきます。

乳歯列期とは

「乳歯列期」とは、乳歯(子供の歯)が全て生え揃ってから、永久歯(大人の歯)が生え始めるまでの時期を指します。

初めて乳歯が生えるのは生後6-7か月頃、たいていは下あごの前歯です。それから上あごの前歯、奥歯と順番に生えていき、3歳ごろに全部で20本の乳歯が生え揃うと、乳歯列の完成です。その後、6歳頃に初めての永久歯が生え始めます。つまり、乳歯列が完成した3歳から永久歯が生え始める6歳前後までを「乳歯列期」と言います。

乳歯列期に起きるトラブル

むし歯になってしまう

乳歯は、永久歯と比べてとても虫歯になりやすいです。
その理由としては、酸に弱いこと、乳歯の奥歯は溝が細かく汚れがたまりやすいこと、が挙げられます。また、乳歯のエナメル質は永久歯の半分程度の厚さしかありません。一度虫歯になってしまうと進行が早く、歯の神経とも近いことからあっという間に痛みが出てきます。

虫歯は、歯と歯の間の見えないところ(つまり、磨きにくいところ)にできやすいため、穴があくまでなかなか気付けません。気付いた時にはかなり進行してしまっており、抜歯になってしまった、なんて場合もあります。虫歯が進んで痛くなる前に発見できるよう、定期的な歯科検診が大切です。

歯並びが悪い

乳歯列での理想的な歯ならびとは、上の歯が下の歯より外側にあり、歯と歯の間にすき間がある状態です。

歯と歯の間にすき間がある、いわゆるすきっ歯の状態を心配する方が多いですが、乳歯列の場合はすき間があることが正常です。なぜなら乳歯の後から生えてくる永久歯は、乳歯よりも歯の幅が大きく、乳歯の時期にすき間があることによって永久歯がきれいにならぶからです。逆に、一見問題のなさそうな、きれいにならんでいる乳歯列は、上記の乳歯と永久歯の大きさの関係から、永久歯列ではでこぼこの歯並びとなる可能性が高いです。乳歯列の時点ででこぼこがある場合も、永久歯列でも同様にでこぼことなるでしょう。

他にも、乳歯列で問題となる歯並びは、下の歯が上の歯より外側にある咬み合わせ、いわゆる受け口です。「反対咬合」もしくは「交叉咬合」と言いますが、自然に改善することは難しい咬み合わせであるため、できるだけ早く正しい咬み合わせに治す必要があります。

乳歯の数がおかしい

乳歯は上下合わせて全部で20本ですが、時に20本すべての歯が揃わない事があります。
原因として、

  1. 元々作られなかった(先天性欠如歯)
  2. となりの歯とくっついてしまった(癒合歯)
  3. あごの骨の中で埋まってしまった(埋伏歯)

などが挙げられます。
これらはご自身や保護者の方が発見するのは難しく、歯科医院でレントゲン撮影をして初めて気づく事がほとんどです。

将来きれいな歯並びを手に入れるために、乳歯列期からできること

歯磨きの習慣・仕上げ磨き

歯が生えてきたばかりの始めの時期は、まず歯ブラシに慣れさせることが大事です。奥歯が生えてくるまでには歯磨きが習慣になっていることを目指しましょう。

仕上げ磨きにはいくつかポイントがあります。

歯ブラシの毛先の当て方

歯の表面を磨くときは歯ブラシの毛先を歯に垂直に当てます。歯と歯ぐきの境目は汚れが残りやすいため、毛先を歯ぐきに向かって斜めに当てましょう。歯と歯の間も歯ブラシを傾けて、しっかり毛先を当てましょう。

歯ブラシの動かし方

毛先が広がらない程度の軽い力で磨きましょう。毛先は小刻みに動かし、1-2本ずつ磨きます。強い力でゴシゴシ磨いても汚れは上手く落とせません。歯ぐきを傷つけてしまい、お子さんが痛がって歯磨きを嫌がる原因となってしまう事もあるので気を付けましょう。

仕上げ磨きのタイミング

できるならば毎食後の仕上げ磨きが理想的です。毎食後が難しい場合は、夕食後や就寝前の仕上げ磨きを習慣にしましょう。

慣れないうちは、保護者の方もお子さんも上手にできないのは仕方ありません。声を掛けてあげながら、まずは習慣化することが大事です。歯医者さんで相談すると、仕上げ磨き用の歯ブラシや仕上げ磨きしやすいポジションなども教えてもらえます。

フッ素塗布

歯にフッ素を塗ることで歯を強くし、虫歯を予防しましょう。
フッ素の効果には、

  1. 歯質の強化:歯の最表層のエナメル質を酸に溶けにくい性質に変え、むし歯への抵抗力を高める
  2. 歯の再石灰化の促進:歯から溶け出したミネラル(カルシウムやリン)を補填しエナメル質の修復を促進する
  3. 虫歯菌の活動抑制:虫歯の原因となる細菌の働きを弱め、歯を溶かす酸がつくられるのを抑制する

などがあります。

歯科医院で扱うフッ素は高濃度のため、3か月に1回程度の塗布がおすすめです。それ以外には自宅でも、フッ素配合の歯磨き粉や歯みがきジェル、フッ素洗口剤を使用することで簡単に取り入れることができます。特に、就寝前の使用がおすすめです。就寝中は唾液量が減り、フッ素が長くお口の中に留まるため、高い効果を得られます。

お口周りのトレーニング

MFT(口腔機能療法、Oral Myofunctional Therapy)という言葉を知っていますか?

MFTとは、「歯列を取り巻く口腔周囲筋の機能を改善する」ための訓練、つまり、お口周りの筋肉のトレーニングです。

きれいな歯並びのために、なぜ筋肉のトレーニングが重要なのかというと、お口周りの筋肉から受ける力が歯並びに大きく影響するからです。矯正治療では、矯正装置によって歯に力を加え、歯を動かします。それと同じように、お口の周りにある筋肉から受ける力で歯は動いていくのです。歯の外側には頬や唇、歯の内側には舌があり、常に歯に力を加えています。外側からと内側からの力がバランスよく加わることで、歯はあごの骨の中で正しい位置に収まっています。そのバランスが乱れるとどうなるでしょうか。

例えば、いつもお口がぽかんと開いているお子さんは、歯の外側から加わる力が弱くなります。舌で歯を押してしまう癖があるお子さんは、歯の内側から加わる力が強くなります。このように歯に加わる力のバランスが乱れてしまうと、歯が正しい位置に収まることができなくなり、歯並びの乱れにつながってしまいます。MFTによってお口周りの筋肉のトレーニングを行い、歯に加わる力のバランスを整えることが大切です。

歯医者さんで教えてもらえるMFTを実践することで、『お口ぽかんが防止できる』『活舌が良くなる』『姿勢が良くなる』など、様々な効果があります。

乳歯列期からの矯正治療

乳歯列期で矯正治療を行ったほうが良い咬み合わせは、反対咬合(上の歯と下の歯が逆になっている。受け口)や交叉咬合(奥歯で咬み合わせがずれている状態)、開咬(前歯で咬みない状態)等です。これらの咬み合わせは自然に改善することはなく、また永久歯の噛み合わせの悪さにも繋がります。乳歯の時期から、矯正治療によって正しい歯並びに治してあげる必要があります。

当院では乳歯列期のお子さんの矯正治療には「プレオルソ」という、マウスピース型の矯正装置を使用します。プレオルソは歯に大きな負担をかけずに歯やあごを移動させ、不正咬合を改善します。歯並びの改善だけでなく、口呼吸から鼻呼吸へと促したり、舌の正しい位置や正しい発音のトレーニングの効果もあります。

まとめ:不正咬合の早期発見のために、早めに歯医者さんに相談しましょう

今回は乳歯列期に、将来のきれいな歯並びのためにできることを紹介しました。仕上げ磨きやフッ素含有の歯磨き粉などはすぐにでもご家庭で取り入れられることですので、ぜひ試してみてください。フッ素塗布や歯並びについては歯科医院を受診し相談してみましょう。

虫歯や歯肉炎(歯周病)だけでなく、不正咬合(噛み合わせ・歯並びの悪さ)も早期発見・早期治療がとても大切です。早く相談しておけば良かったと後悔することがないよう、歯が生え始めたら一度かかりつけの歯医者さんに相談することをおすすめします。

名古屋市千種区にある歯医者 ちくさ池下歯科・矯正歯科では、日本矯正歯科学会認定医の資格を持つ歯科医師と、日本顎関節学会専門医・日本補綴歯科学会専門医の資格を持つ歯科医師が協力して、患者様のお悩みを解決できる体制を整えています。お悩みや不安について、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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歯科医院でおこなう、歯ぎしり・食いしばりに対するボツリヌス治療について

「歯ぎしりや食いしばりを改善したいけど、エラボトックスは効果があるの?」

こんにちは。
名古屋市千種区にある歯医者、ちくさ池下歯科・矯正歯科 院長の河村です。

就寝中の歯ぎしり、日中の食いしばりや噛みしめに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。日常的な歯ぎしり・食いしばりから引き起こされる顎の疲労感は、時には大きなストレスへと変わってしまいます。さらには、顎関節症や歯周病、歯が折れるなどのお口の中のトラブルの原因となったり、エラが張って見えるという見た目のコンプレックスにも繋がることがあります。

歯ぎしり・食いしばりに対するアプローチとして、注目を集めているのがボツリヌス治療です。歯科医院で行われるこの治療法は、歯ぎしり・食いしばりの症状を和らげ、日常生活のストレスを軽減する可能性を秘めています。しかし、詳しい治療法やメリット・デメリットについてご存じない方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、「歯科医院で行うボツリヌス治療について詳しく知りたい」という方に向けて、歯ぎしり・食いしばりに対するボツリヌス治療の概要について、歯科医師が詳しく解説していきます。

ボツリヌス治療とは?

ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌から抽出されるボツリヌストキシンという成分(タンパク質)を注射する治療法です。ボツリヌストキシン製剤は、一時的に筋肉の働きを弱め、筋肉の過剰な収縮やそれに伴う影響を抑える効果があります。元々は筋肉の痙攣に対する治療に用いられましたが、現在では表情しわの治療や小顔効果を目的とした美容医療にも応用されています。

ちなみに、「ボトックス」という言葉が有名ですが、ボトックスはアメリカのアラガン社が製造・販売しているボツリヌストキシン製剤の商品名です。「ボトックス治療」や「エラボトックス」をうたっていても、実際には「ボトックス」ではない製品を使用している場合もありますので、注意が必要です。
当院では、世界30か国以上で販売・使用されている実績のある韓国製のボツリヌストキシン製剤を使用しています。

歯ぎしり・食いしばりに対して有効なボツリヌス治療

歯ぎしり・食いしばりについて

歯ぎしり(就寝中に上下の歯を擦り合わせてしまうこと)や食いしばり(無意識に上下の歯を接触させたり強い力で噛み合わせること)は、日常のストレスや緊張から発生すると言われており、歯や顎に様々な影響を及ぼすことがあります。

夜間の歯ぎしりや食いしばりは、主に睡眠サイクルの浅い眠りの時に起きると考えられています。原因は明確に解明されてはいませんが、ストレスが大きく関わっているとされており、疲れが溜まっていたり環境の変化によって増加するという報告もあります。

日中の食いしばりや噛みしめもストレスや緊張が関与していると考えられています。また集中しているときに噛みしめる癖がある方や、噛み合わせに不安があるため、無意識に噛みしめを行ってしまうという方もいます。

歯ぎしり・食いしばりによるリスク

歯ぎしりや食いしばりを続けてしまうと、歯のすり減りや歯茎が下がるだけでなく、最悪の場合は歯が割れることもあります。また顎の筋肉の強張りや痛み、顎関節の痛みといった症状が起こります。長年にわたって歯ぎしりや食いしばりが続くことで、頭痛や肩こりといった体の不調や、噛み合わせの違和感を発症する可能性があることも知られています。
さらに、顎の筋肉のひとつである咬筋が緊張することで、「エラが張る」「エラが目立つ」という見た目のコンプレックスに繋がることもあります。

歯ぎしり・食いしばりに対する治療法と、ボツリヌス治療の効果

歯ぎしりや食いしばりに対しては、マウスピース(ナイトガード)を使用したり、日常生活で噛みしめの自覚をして意識するというものが主な治療法でした。しかし、これらはあくまでも症状に対する対症療法で、根本的な解決というわけではありません。
そこで、歯ぎしり・食いしばりに対するボツリヌス治療が注目されています。
ボツリヌス治療によって、ボツリヌストキシン製剤を咬筋に注入することで、咬筋の収縮が抑えられ食いしばりの力が発揮できなくなります。そのため、筋肉の強張りが改善して顎の痛みが軽減したり、歯へのダメージが少なくなるだけでなく、エラの張りがすっきりして見えるという効果があります。

ボツリヌス治療の流れと、メリット・デメリット

ボツリヌス治療の流れ

カウンセリング

患者様のお悩みを詳しく聞かせていただきます

診察・検査

お口の中や顎関節の状態について、レントゲンなどを使用して検査を行います

診断・治療説明

検査の結果から考えられる、お悩みの原因について説明をします
複数の治療方針を提示することで、ご自身に合った治療方法を選ぶことができます
ボツリヌス治療を選択された場合は、施術にうつります

ボツリヌス治療

施術前に注意点について確認を行います
施術時間は10~15分程度です
施術終了後はすぐにご帰宅いただけます

アフターケア

施術後2~3日が経過してから、ボツリヌス治療の効果が実感できます
およそ1週間後に効果判定を行い、フォローアップの期間についてご案内します
効果は4~6ヶ月程度持続するため、効果が減弱するころに再度施術を行う場合もあります

ボツリヌス治療のメリット

  • 歯ぎしり・食いしばりに対する筋肉や顎関節への負担が減る
  • 歯のすり減りや歯が割れるのを予防することができる
  • 知覚過敏が少なくなることがある
  • 処置の時間が短く、効果が数か月持続する
  • ダウンタイムが少ない
  • エラの張りが少なくなることで、見た目がすっきりする

ボツリヌス治療のデメリット

  • 一時的に噛む力が弱くなり、食事のときに違和感を感じることがある
  • 注射による内出血が生じることがある
  • 一定期間で効果が減弱するため、数か月ごとの施術が必要となる

注意点とまとめ

当院で行うボツリヌス治療は、小顔効果などの美容医療を目的としたものではなく、歯ぎしり・食いしばりによる歯や顎関節の過剰なストレスを解消することを目的としています。そのため、顎関節の状態や虫歯、歯周病の検査を行うことは必須です。
患者様の見た目が気になる部位ではなく、筋肉の緊張が認められる部位への施術を行っております。

いかがでしょうか。今回は、歯ぎしり・食いしばりに対するボツリヌス治療の概要と、治療の流れ、メリット・デメリットについて解説しました。

歯ぎしり・食いしばりによる症状は、激痛などを伴うことは少ないものの、起床時や食事のときの疲労感から日常生活におけるストレスに繋がります。ボツリヌス治療を行うことで、顎の不快感を軽減できるだけでなく、頭痛や肩こりが改善したりエラ周りがすっきり見えるようになる可能性もあります。

名古屋市千種区にある歯医者 ちくさ池下歯科・矯正歯科では、日本顎関節学会専門医の資格を持つ院長がカウンセリングから顎関節の診断、ボツリヌス治療の施術までを行っております。他にもマウスピース治療などの診療メニューのご案内も可能です。まずは検査と相談だけでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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セラミック矯正を行って後悔する理由や、失敗したと感じるポイント

「セラミック矯正は絶対やめておいた方が良いと聞くけど、本当?」

こんにちは。
名古屋市千種区にある歯医者、ちくさ池下歯科・矯正歯科 院長の河村です。

セラミック矯正とは、自分自身の歯にセラミックを装着して、歯並びを美しく整える治療法です。通常の矯正治療のように歯を動かす装置を使用しないため、『矯正』という単語は入っていますが、矯正治療とは全く別物の治療方法となります。

近年、世良美玖矯正は注目を集めており、口元にコンプレックスを抱える方の中には『セラミック矯正で口元を改善したい』と考えている方もいるでしょう。しかし、一方で通常の矯正治療にはないデメリットも存在します。そのため、治療方法を検討するうえで、セラミック矯正のデメリットや失敗について知っておくことがとても重要です。

また、このページを読んでいる方の中には、過去に受けたセラミック矯正を後悔していたり、治療が失敗したと考えていて、リカバリーを検討している方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、「セラミック矯正の失敗について詳しく知りたい」という方に向けて、セラミック矯正で起こるトラブルや、失敗の事例、後悔しやすいポイントについて歯科医師が詳しく解説していきます。

セラミック矯正はどこで受けるべき?

はじめに、セラミック矯正は歯科医師にとってとても難易度の高い治療法です。

セラミックに関する詳しい知識だけでなく、歯並びや審美歯科についてや、セラミックを長期間安定させるための噛み合わせなど、幅広い知識が必要です。また技術的にも、歯を削ることに加えて、歯茎へのダメージを最小限にしたり、仮歯やセラミックの取り扱いなど、高い技術力を身につけていることも必須と言えます。さらに、一度失敗したセラミック矯正のリカバリーとなると、さらに難易度は上がると言えるでしょう。

当院では、日本補綴歯科学会専門医・日本顎関節学会専門医である院長と、日本矯正歯科学会認定医である副院長によるチーム医療で、そのような難しい症例の解決を目指しています。

セラミック矯正で後悔するポイント

セラミック矯正を行ったあとに後悔しやすいポイントについてご紹介します。セラミック矯正で失敗しないためにも、トラブルについて知ることが非常に重要です。

セラミックが割れてしまった

現在、歯科治療で使用されているセラミックはどんどん改良が進んでおり、一昔前のものと比較して格段に質が向上しています。しかし金属のように曲がる材料ではないため、強い力によって割れたり欠けてしまうことがあります。またメタルボンドと呼ばれる、フレームに金属が使用されているものだと表面のセラミックが欠けることで金属が露出してしまいます。

一度装着したセラミックを修理のために外すことはできません。小さく欠けた場合はお口の中で修正することもできますが、そのとき使用する材料が劣化したり、セラミックとの境目が目立ってしまうというリスクがあります。また大きくかけた場合は、一度全部除去して再治療が必要となることもあります。

セラミックの破損トラブルを防ぐために必要なことは、『セラミックの正しい取り扱い』『セラミックの適切な厚みを確保するように削る技術』『精度の高い型採り』『噛み合わせのコントロール』など多岐に渡るため、治療を受ける歯科医院選びが重要と言えるでしょう。

またセラミック破損のリスクが高いと判断された場合は、仮歯の期間を長くしてトラブルが起こらないかを見極めたり、セラミック装着後に夜間のマウスピースの使用をおススメすることもあります。

歯が痛い 歯茎がうずくようになった

歯の中には歯髄(しずい)と呼ばれる神経が通っていますが、セラミックの土台となる歯を削る際に歯髄にダメージが蓄積されてしまうと、歯髄炎を起こすことがあります。歯髄炎が発症すると歯がズキズキ痛む原因になってしまうため、根管治療を行って歯髄を除去する必要があります。

また、元々かぶせ物が装着されていて、根管治療が行われた歯でも、不十分な根管治療が原因となり根尖性歯周炎が発症してしまうことがあります。根尖性歯周炎が起きると、歯の根元がうずいたり、歯茎が腫れて膿が出るなどの症状が出てしまいます。解決のためには、歯科用CTなど撮影して原因となっている歯の特定をしたうえで、根管治療が必要となります。

根管治療によって歯髄を除去された歯は、根管治療を行っていない歯と比較して、歯の寿命が短くなると言われています。できるだけ歯を削る量を最小限にしたり、歯髄を温存できる治療方法を選ぶことで、このようなトラブルを避けることができます。

 歯茎が下がって不揃いになった 歯の根元の黒ずみが目立つ

基本的にセラミックは表面の劣化が金属などと比較して少なく、プラークが付着しづらい材料だと言われています。しかし、セラミックとご自身の歯に隙間や段差があったり、歯の方向を無理に変えたセラミックが装着されていると、その部分の歯磨きが難しくなり、歯肉炎を発症します。歯肉炎が進行すると、歯茎が下がって不揃いな見た目になってしまいます。

歯肉炎の原因が適合の悪いセラミックである場合、いくら患者様が歯ブラシを頑張ったとしても限界があります。歯茎の状態を改善するためには、セラミックのやり直しが必要です。

段差の少ない、適合の良いセラミックを作るためには、担当歯科医師と歯科技工士の高い技術が不可欠です。「歯ブラシ指導のないまま治療が進む」「仮歯の状態で歯茎からよく出血する」このような場合は要注意かもしれません。

 食べづらい・噛みづらくなった 噛み合わせが悪くて顎が痛い

セラミック矯正では、通常の矯正治療とは異なり歯を移動させずに見た目を改善するため、歯の傾きや方向に無理が生じる場合があります。それが噛み合わせの悪さや、食事のしづらさに繋がることもあります。また前述のようにセラミックが割れることがある材料のため、トラブルを避けるために全く噛んでいないセラミックが装着されている場合もあります。このように見た目だけを優先したセラミック矯正が行われることも、残念ながら存在します。

噛み合わせの悪いセラミックが装着されていると、他の歯や顎関節にしわ寄せが生じて、歯やセラミックが割れたり顎関節症になるリスクがあります。セラミックの長持ちのためには安定した噛み合わせが必要不可欠です。仮歯の期間に食事のしづらさを確認したり、担当医が細かい噛み合わせの調整をしてくれるか、見極める必要があるでしょう。

見た目に満足していない

セラミック矯正を行ったのに、思ったよりも見た目が改善しなかったと感じてしまう理由として、「セラミックの色や形に対する不満足」と「横顔のバランスが改善しなかった」というふたつの原因が考えられます。

セラミックは、歯の透明感やグラデーションをとても細部まで再現できる材料ですが、そのためには歯科医師・歯科技工士の技術だけでなく、患者様の要望を聞き取るコミュニケーションが必須です。「他の歯と色味を合わせたい」「できるだけ白い歯にしたい」など、時間をかけたカウンセリングを受けることで、セラミック矯正で失敗したと後悔する可能性を減らすことができるでしょう。

またセラミック矯正は歯の傾きを変えることはできますが、歯茎の位置を変えることはできません。特に「出っ歯」や「口ゴボ」の方は、思ったよりも改善しなかったと治療を後悔することになってしまいます。口元の改善のためには通常の矯正治療が必要です。患者様のお悩みに対していくつかの治療方法を提案してくれるか、治療法によってできることとできないことをしっかりと説明してもらえるか、がとても重要です。

セラミック矯正はやり直しできるの?

これまで解説した通り、セラミック矯正には歯科医師の幅広い知識と高い技術だけでなく、同じくセラミックに精通した歯科技工士とのコラボレーションがとても重要です。また、患者様が一度失敗したと感じている治療をやり直す場合、初回の治療よりも治療の難易度が格段に上がります。慎重に医院選びを行う必要があるでしょう。

当院では、日本補綴歯科学会専門医・日本顎関節学会専門医の資格を持っている、セラミック治療と噛み合わせの専門家である歯科医師が治療を担当します。さらに、必要な場合は日本矯正歯科学会認定医による矯正治療など、様々な治療オプションを取り揃えています。

お悩みを解決するお手伝いができるよう、様々な方法をご提案させていただきますので、ぜひ一度カウンセリングでご相談ください。

まとめ

いかがでしょうか。今回は、セラミック矯正で失敗したと後悔するポイントと、セラミック治療のやり直しについて解説しました。

セラミック矯正やセラミック矯正の再治療は難易度が高いため、歯科医院選びが重要です。さらに、その歯科医院でカウンセリングを十分に受け、メリットとデメリットをしっかりと理解したうえで治療法を選択することが、セラミック矯正で後悔しないためにもっとも重要と言えるでしょう。

名古屋市千種区にある歯医者 ちくさ池下歯科・矯正歯科では、日本矯正歯科学会認定医の資格を持つ歯科医師と、日本補綴歯科学会専門医の資格を持つ歯科医師が協力して、患者様のお悩みを解決できる体制を整えています。まずは検査と相談だけでも、もちろん可能です。お悩みや不安について、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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矯正治療の費用について

「矯正治療の料金って高いよね」「矯正治療の治療費にはどんな内容が含まれているんだろう」

矯正歯科治療の治療費は高額となるイメージがありますが、どのような内訳になっているか気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、「矯正治療の治療費の内訳を知りたい」という方に向けて、初診から治療終了までにかかる費用の内訳について、実際の治療の流れに沿って解説していきます。

はじめに(矯正治療はなぜ高額?)

矯正歯科治療が高額となる理由は、医療保険(公的医療保険)の対象とならない「自由診療」、つまり全額自己負担となる治療であるためです。
医療保険は「病気を治すための治療」に対して国が治療費の一部を負担する制度です。矯正治療の多くは、歯並びを治す・整えるための治療であり、歯並びが悪いだけでは虫歯や歯周病の直接的な要因にはならないという考えのため、矯正治療は基本的に医療保険制度の対象外となっています。
※先天性疾患による不正咬合や外科的矯正治療の場合は、保険治療の対象となります。

矯正治療の料金の内訳は?

矯正治療の大まかな流れは、(1)初診相談(2)検査・診断(3)動的治療(歯を動かす治療)(4)保定治療(動かした歯を安定させる治療)となっています。それぞれでかかる費用について解説します。

治療前の料金(初診相談、検査・診断)

初診相談

お口の診察と写真撮影を行います。必要に応じてレントゲン撮影や口腔内スキャンを行う場合もあります。診察結果と写真をもとに、考えられる治療の内容や費用の概要をお話しします(正確な治療計画の立案には検査・診断が必要です)。

検査・診断料

検査では、歯科用CT、口腔内スキャン、顔写真の撮影、虫歯・歯周病のチェックなどを行います。歯科用CTではあごの骨や歯、顎関節の状態を3次元的に把握したり、お顔を横から見たレントゲン写真を作り、上下のあごのバランスや歯の傾きなどを確認します。口腔内スキャンでは咬み合わせの記録をとります。これらの検査結果を分析し、患者さんの現在の状態を詳しく調べます。
診断では、検査結果の説明、治療計画・治療費についてお話しします。検査結果をもとに治療計画を立てているため、初診相談時にお話しした内容と異なる場合があります。

治療中の料金

歯を動かす治療を動的治療と言います。動的治療は患者さんの年齢・生え代わりの状態に応じて乳歯列矯正治療、第一期治療、第二期治療に分けられます。

乳歯列矯正治療

乳歯列の方を対象とした矯正治療です。既製のマウスピース型矯正装置を使用し、咬み合わせやあごのバランスなどを改善します。

基本技術料(第一期治療)

第一期治療は混合歯列期の矯正治療です。第一期治療では歯列の拡大や上下のあごのバランスを整えるなど、今困っていることの改善に加え、将来生えてくる永久歯のための土台作りを目的に治療を行います。取り外し式の拡大装置や、固定式のワイヤー装置などを使用します。装置代は基本技術料に含まれます。

基本技術料(第二期治療:ワイヤー矯正)

第二期治療は永久歯列期の矯正治療です。ワイヤー装置で治療を行う場合の基本技術料となります。ワイヤー装置代は基本技術料に含まれます。当院で第一期治療を行った方は、第二期治療の基本技術料から第一期治療の基本技術料を差し引いた金額となります。

基本技術料(第二期治療:マウスピース矯正)

第二期治療は永久歯列期の矯正治療です。マウスピース矯正の場合、治療難易度によって料金が異なります。当院で第一期治療を行った方は、第二期治療の基本技術料から第一期治療の基本技術料を差し引いた金額となります。

部分的矯正治療

部分的矯正治療は前歯のみ、奥歯のみといったように部分的に矯正装置をつける治療です。補綴治療(かぶせ物の治療)の前に歯を整えたり、骨の中に埋まって出てこられない歯を引っ張る治療などが対象となります。

調整料

矯正装置を装着すると、月に一度調整が必要となります。第一期治療、ワイヤー矯正治療、マウスピース矯正治療、部分的矯正治療のいずれも毎回調整料がかかります。

観察料

乳歯列矯正治療の方が対象です。乳歯列矯正治療の方は月に一度観察が必要であり、毎回の観察料がかかることがあります。

抜歯

矯正治療に関わる抜歯は保険治療の対象外となります。抜歯料金には痛み止め等のお薬代も含まれます。親知らずおよび乳歯の抜歯は保険治療の対象となります。

付加装置

第二期矯正治療(ワイヤー矯正治療)の際、ワイヤー装置と併用して、付加装置を使用する場合があります。歯列の幅を広げたり、歯を後ろへ動かすなど、歯を動かす際の補助装置として使用します。

歯科矯正用アンカースクリュー

歯科矯正用アンカースクリューとは、矯正治療を効率的に進めるために開発された装置です。第二期治療(ワイヤー矯正治療)で使用します。あごの骨に小さなネジをうち、歯を動かす支えとして使用します。ワイヤー装置だけでは動かせない方向に歯を動かしたり、治療を効果的に進めることが可能となります。料金内には埋入費用・痛み止め等のお薬代も含まれます。

審美ワイヤー(ホワイトワイヤー)

できるだけ目立たない装置をご希望の場合、白いコーティングが施されたワイヤーをご用意しています。当院の場合では、基本技術料に審美ワイヤー(ホワイトワイヤー)料金が追加となります。

治療後の料金(保定装置、観察料)

矯正治療で歯並びを整えたあとは、動かした歯を安定させるための治療(保定治療)が必要です。

保定装置

固定式あるいは取り外し式の保定装置を使用します。

保定観察料

保定治療中は3-4か月に一回、保定観察が必要です。歯並びが安定しているか、保定装置を問題なく使えているかを確認します。当院では虫歯・歯周病のチェックと併せて行います。

矯正治療費の支払方法について

一括でお支払い

当日お支払いいただく場合は、現金もしくはクレジットカードがご利用いただけます。
銀行振り込みをご希望の場合は、装置装着日までに指定の口座にお振込みください。

分割払い

分割払いをご希望の場合はデンタルローンをご利用いただけます。

医療費控除の対象になります

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間にかかった医療費の総額が一定額を超えた時に適用される制度で、確定申告の際に所得税の一部が還付されます。
矯正治療は治療を行う目的や治療を受ける年齢によって矯正治療が「必要」と認められる場合、医療費控除の対象となります。
発達段階にある子どもの矯正治療は、歯ならびや咬み合わせを改善し、良好な成長を促すために必要な治療と考えられるため、医療費控除の対象となります。
成人の矯正治療は、咀嚼や咬み合わせなどの問題の改善を目的とする場合は医療控除の対象となります。見た目の改善など、美容のみを目的とした場合は控除の対象になりません。

医療費控除の対象となる医療費は以下のものになります。

  • 矯正治療に関わる基本的な費用(検査・診断料、基本技術料、調整料など)
  • 治療に伴い必要となる抜歯費用や医薬品の購入費用など
  • 通院のための公共交通機関による交通費、子どもの通院の付き添い人の交通費など(自家用車のガソリン代、駐車料金などは対象となりません)

治療費の領収書は再発行できませんので、必ず保存しておいてください。

矯正治療が保険適応になる場合

矯正歯科治療は一般的には保険適用外ですが、以下の場合に限り、保険診療の対象となります。
①「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
②前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療
③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療
なお、これらの保険が適用となる矯正歯科治療を行える医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、矯正治療の初診から治療終了までにかかる費用について解説しました。あくまでも当院の矯正治療費用を基に解説しているため、医院によって異なる場合があることはご了承ください。

矯正治療は、「ほとんどが健康保険適応外であること」「治療期間が長くかかること」「専門性の高い治療であること」といった理由から、治療費が高額になります。しかし、見た目のコンプレックスが解決できるだけでなく、将来的な虫歯や歯周病のリスクも下げられるなど、多くのメリットもあります。矯正治療で後悔しないために、費用の安さだけではなく、担当歯科医師の雰囲気や経歴なども事前にチェックしておくと良いでしょう。

歯並びはひとりひとり個性があり、治療内容や使用する装置などについては一概には言えません。気になることがあれば、まずは矯正治療専門の歯科医師に相談すると安心です。お口の中を実際にみて、それぞれにあった治療プランをご提案してもらえます。
当院では無料矯正相談を行っております。いつでもお気軽にご相談ください。

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セラミック矯正がおススメできる方の特徴とその注意点

「自分の歯並びは、矯正治療とセラミック矯正のどちらが最適なの?」
口元にコンプレックスがある方で、気になる部分だけ治療したいと考えた場合、ネットで調べるとセラミック矯正という治療が選択肢として挙がってきます。

審美的なセラミックを被せる治療法は以前から歯科医院でよく行われていますが、『セラミック矯正』という単語は比較的新しいものになります。セラミック矯正について調べると、『後悔』『やらない方が良い』など、ネガティブな記事や体験談も多く見られ、不安を感じる方もいらっしゃると思います。

また過去にセラミック矯正を受けた経験がある方々の中にも、セラミックや歯のトラブルが原因で後悔していたり、リカバリー(再治療)を検討している方もいらっしゃるかもしれません。

セラミック矯正はメリットも存在する反面、合わない場合は無理な治療を進めることで後悔する原因になってしまいます。

この記事では、「セラミック矯正が自分に合っているかどうかを知りたい」という方に向けて、セラミック矯正がおススメされる状況や、その特長と注意点について歯科医師が詳しく解説していきます。

セラミック矯正とは

セラミック矯正とは、歯の形態や歯並びを美しく整え、笑顔の印象や横顔のバランスを整えるためにご自身の歯にセラミックを装着する治療法です。通常の矯正治療とは異なり、歯を動かす装置を使用しないため、厳密には矯正治療には分類されません。歯を動かす代わりに「歯を削って人工物(セラミック)を装着する」必要があるため、『審美補綴治療』や『美容治療』の一環として位置づけられることもあるようです。

セラミック矯正には通常の矯正治療にはない、以下のようなメリットがあります。

  • 治療期間が短い
  • 矯正装置が必要ない
  • 後戻りが起こらない(少ない)
  • 歯の形態や色味も改善することができる

詳細は前回の記事(セラミック矯正について 通常の矯正治療との違い、メリットとデメリットを解説)をご参考にしてください。

このような特長を持つセラミック矯正ですが、もちろんデメリットも存在します。また、お口の中の状況によってはセラミック矯正よりも通常の矯正治療が最適な場合もあります。

セラミック矯正が適している方はどのような特徴があるのでしょうか。

セラミック矯正がおススメな方

セラミック矯正が適していると考えられるお悩みの特徴と、その場合の注意点をご紹介します。

短期間で治療を終わらせたい方

通常の矯正治療では、歯を動かすというプロセスが必要なため、治療には長い期間がかかることがあります。治療前の歯並びによって異なりますが、短くても半年程度、長い場合は治療が完了するまで2〜3年かかることも珍しくありません。

一方、セラミック矯正では、必要な治療箇所によって期間が前後しますが、少ない本数の場合には1〜2ヶ月で治療を終えることも可能です。セラミック装着の前に虫歯や歯周病(歯肉炎)の治療が必要な場合でも、通常は3ヶ月〜半年程度で完了するため、1年以上の期間が必要となることはほとんどありません。

生活スタイルやライフイベントによって、あまり長い治療期間をかけることができず、気になる部分だけの治療を行いたい方には、セラミック矯正がおススメです。

注意点として、通常の矯正治療と比較して治療期間が短いとはいっても、多数の虫歯がある場合や、根の炎症が進行して根管治療に時間がかかる場合など、予想よりも長い期間が必要になることもあります。また、セラミック矯正ではなく通常の矯正治療を選択することで、歯の切削や神経の除去を回避できる可能性があることも考慮しましょう。削った歯は元には戻らないので、治療期間や通院回数と、歯の健康と、どちらを優先するかをしっかりと考えましょう。

気になる場所や治療箇所が少ない方

ご自身の歯について気になっている本数が限られている場合、歯並び全体の治療は必要なく、部分的な治療のみで悩みを解決できる場合があります。例えば、「前歯4本の歯並びと色味だけ改善したい」ときなど、セラミック矯正では気になっている部分をピンポイントで治すことができます。

注意点としては、患者様ご自身が特定の歯のみの治療を希望されている場合でも、歯科医師からは全体の治療が必要だと判断されることもあります。少ない本数で無理に治療を進めることで、左右の見た目や、歯の大きさのバランスが乱れてしまう可能性もあるため、事前に適切な検査と相談を行い、歯科医師と患者様とで治療後のイメージについて共有を行うことが重要です。

また、費用についても気を付ける必要があります。セラミック治療は通常1本 7万円〜15万円程度であり、矯正治療は一般的に60万円〜100万円程度と言われています。6本のセラミック装着を行う場合では、セラミック矯正の方が通常の矯正治療よりも費用が高くなってしまう可能性もあります。治療費についても、見積などを提示してもらい、治療期間と併せて事前に確認を取る必要があるでしょう。

既に治療された歯が多い方、元々の歯の形態や色味が悪い方

過去の虫歯の治療で詰め物やかぶせ物が多数装着されている場合、矯正治療で歯並びを整えただけでは、古い詰め物やかぶせ物の色味が目立ってしまうことがあります。この場合、矯正治療後に詰め物やかぶせ物の交換が必要で、治療期間が長引いたり、費用がかさんでしまうことがあります。

また、元々の歯の形態や色味が望ましくない場合も考慮が必要です。特に生まれつき歯のサイズが小さい『矮小歯(わいしょうし)』の状態では、通常の矯正治療だけでは理想的な歯の大きさにすることができません。セラミックを装着することで、他の歯との大きさのバランスを整え、より美しい笑顔をデザインすることが可能です。

注意点としては、このようなケースでも、通常の矯正治療とセラミック治療を組み合わせることで、より審美的な結果を得られることが多くあります。セラミック矯正のみでは、健康な歯を削る必要があったり、治療計画に無理が生じてしまう可能性があります。また、歯並びの悪さから虫歯になってしまっている場合には、根本的な解決にならないことも留意すべきです。

既にセラミックが装着されているけど満足していない方

過去の事故や虫歯治療、以前行ったセラミック矯正によってセラミック治療を受けた経験があるという方々、次のような症状でお悩みではないでしょうか?

  • 自分の歯とセラミックの色味が合っていない気がする
  • セラミックが欠けてしまって、形が不自然になった
  • 歯茎の位置が変化して、セラミックと歯茎の間が黒ずんできた
  • セラミックを装着した歯を磨くと、歯茎から血が出ることがある
  • 歯の根元がときどき腫れる、押すと痛みを感じる

このような症状がある場合は、通常の矯正治療では解決できないため、セラミックを作り直す必要があるかもしれません。さらに、歯肉炎や根尖病巣(根の先の炎症)は放置することで進行し、歯の寿命を縮めてしまい、後悔することになってしまいます。

セラミックの再治療に合わせて、セラミック矯正や通常の矯正治療を併用することで、気になっていたところを解決し、バランスのとれた美しい口元を演出できるようになります。

注意点としては、セラミックのリカバリー(再治療)には、再根管治療(神経を取った歯の再治療)や土台の修正、歯肉ライン(歯茎の形や高さ)の調整、仮歯の調整など、とても複雑で難しいステップが必要になるため、歯科医院の選択が重要です。治療する歯科医院をしっかり選ばないと、理想の結果が得られないだけでなく、治療前よりも悪い状態になってしまうこともあります。セラミックの治療実績が豊富な歯科医院や、噛み合わせ専門医や矯正治療の専門医が在籍する歯科医院を選ぶことで、提案される幅広い方法から最適な治療を検討することができるでしょう。

セラミック矯正がおススメな方に共通の特徴

それでは、どのような方にセラミック矯正が適しているのでしょうか。
セラミック矯正がおススメできる方の共通の特徴をご紹介します。

奥歯の噛み合わせに問題がない

セラミック矯正で治すことができるのは、主に歯の外見だけです。そのため、奥歯の噛み合わせが安定している方が、セラミックが欠けたり割れたりしづらく、長期的な安定が期待されます。

セラミック矯正は歯の移動を伴わないため、噛み合わせなど機能的な部分は改善することができません。奥歯の噛み合わせに問題があると、セラミックの破損リスクが高くなるだけでなく、将来的に顎関節症などの原因となることがあります。通常の矯正治療によって噛み合わせ全体のバランスを整えたり、ナイトガード(夜間に使用するマウスピース)を装着することで、歯ぎしりによるセラミックの破壊を予防したりすることが必要かもしれません。

骨格的に問題がない

上下の顎の骨の位置関係に問題がない場合には、セラミック矯正で前歯を治療することで、調和のとれた噛み合わせを手に入れられる可能性が高いです。

上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合・受け口)、上下顎前突(口ゴボ)の方などは、歯並びだけではなく、骨格的に問題があるケースが多くあります。セラミック矯正による歯だけの治療では骨格のバランスの悪さを改善できません。このような場合には、通常の矯正治療で歯を動かすことによって、骨格のバランスを改善することが望ましい場合もあります。骨格の悪さを無理にセラミック矯正だけで治そうとすると、最悪の場合、歯が折れてしまうなどの、重篤なリスクが高まる可能性があります。

また顎の骨に問題がある場合は、噛み合わせの変化などで、せっかくきれいに直したセラミックが長持ちしない可能性もあります。上下の顎の骨の前後的なバランスや顎関節の状態など、治療を行う前に、歯だけではなく骨格のバランスも調べておく必要があるでしょう。

横顔のバランスが整っている

上の項目と類似しているのですが、横顔のバランスに問題がある場合、セラミック矯正ではお悩みを改善できない可能性が高いです。

上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合・受け口)、上下顎前突(口ゴボ)など、横顔にコンプレックスを持っている方も多いのではないでしょうか。セラミック矯正は前歯の傾きを修正できる範囲に限界があるため、横顔の雰囲気を大きく改善することが難しい場合がほとんどです。こうした場合には、通常の矯正治療によって歯を動かすことで、骨格のバランスを改善することがより効果的かもしれません。

部分矯正で対応できるケースも

上に述べたような、「奥歯の噛み合わせに問題がない」「骨格的に問題がない」「横顔のバランスが整っている」方の前歯の歯並びに関するお悩みに対しては、部分矯正で対応できるケースがほとんどです。

通常の矯正治療では60〜100万円の費用が必要ですが、部分矯正であればその半分の費用で済む場合もあります。本数によっては、セラミック矯正よりも費用を抑えられるかもしれません。しかし、治療期間が数か月〜1年以上かかる場合もあるというデメリットも存在するため、慎重に検討することが重要です。また、歯の形態や色味は修正することができないことも注意する必要があります。

部分矯正とセラミック矯正を併用することで、両方のメリットを受けられる場合もあるでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。今回は、セラミック矯正がおススメされるポイントについて解説しました。

セラミック矯正は「矯正」という単語が含まれていますが、実際は矯正治療よりも補綴治療(かぶせ物など、人工歯を装着する治療)に分類されています。そのため、それぞれ特徴の違うメリット・デメリットが存在しますので、注意が必要です。

歯並びに対するコンプレックスやお口の中の状態はもちろん、かけられる時間や費用も人それぞれ異なります。知人や有名人の体験談だけでは、その治療法が自分に合っているのかどうか、判断ができない場合も多いでしょう。歯並びの治療で後悔しないためにも、歯科医院でしっかりと検査を受け、まずは現状の分析と様々な方法の提案を受けることをおススメします。

当院では、日本矯正歯科学会認定医の資格を持つ歯科医師と、日本補綴歯科学会専門医の資格を持つ歯科医師が協力して、患者様のお悩みを解決できる体制を整えています。まずは相談だけでも、もちろん可能です。お悩みや不安について、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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歯科医院における、歯科用CTの特徴と撮影することのメリットについて

「歯科医院でCTを撮影する理由は?」
「自分にもCT撮影が必要なの?」

CTについて、みなさまはどの程度ご存知でしょうか。
『CT』という言葉については、医療ドラマなどで聞いたことがあるという方が多いかと思います。現代では、医科の領域はもちろん、歯科の領域でもCTによる診断は必須と言っても過言ではありません。しかし、「歯科医院でCT?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、「CTと普通のレントゲンとの違いは?」「歯科医院でCT撮影をした方が良いと言われたけど、本当に必要なの?」という方に向けて、歯科医院でCT撮影を行うべき状況や、そのメリットについて歯科医師が詳しく解説していきます。

歯科用CTについて

歯科医院で導入されているCTは、歯科用CT(コーンビームCT・CBCTとも呼ばれます)といって、歯科治療に特化したCT撮影機器を使用しています。
医科用CTと比較した際の歯科用CTの特徴としては、以下の通りです。

  • 横たわって撮影する医科用CTと違い、立ったまま(座ったまま)撮影ができる
  • 撮影した画像の解像度が高い
  • 撮影時間が短い
  • 被ばく量が少ない

このような特長がある歯科用CTですが、どの歯科医院でも撮影ができるわけではありません。歯科用CTの導入率(普及率)は、歯科医院全体の10〜20%と言われています。
決して安価な機材ではないことや、CTの撮影や画像の読影(CT画像を正確に読み解いて診断をすること)にも特別な知識や技術が必要です。そのため、歯科医院のCT導入は高いハードルがあるのも事実です。しかし、当院においてもCT撮影の頻度はとても高く、正確な診断のためには必須であると考えています。

歯科用CTと通常のレントゲン撮影との違い

歯科用CTと通常のレントゲン撮影との違いは、でき上がる画像の次元の違いです。
通常のレントゲン撮影は、人体という3次元(立体)のものを2次元(平面)に投影しています。例えて言うと、影絵のようなものです。そのため、得られた画像からは奥行きや前後関係を正確に把握することができません。

歯科用CTでは、3次元での撮影が可能となります。撮影されたものをそのまま3次元の画像として確認できたり、様々な断面として確認することが可能です。そのため、通常のレントゲン撮影では確認することができなかった、顎の骨の厚み、歯根の詳細な形、親知らずと神経の距離、顎関節の形などを正確に読み解くことができます。

ちなみに、歯科用CTやレントゲン撮影は、硬組織の描写に優れています。すなわち、歯や骨などの硬い組織を見分けるのがとても得意です。そのため、骨折や骨の変形、歯を支える骨の量、歯のエナメル質の厚みや虫歯の深さなどは細かく診断できます。その一方で、血管・神経・筋肉・脂肪・歯茎などの軟組織を見分けることは少し苦手です。ただし、骨の中を走行する神経などは、骨の形状から推察することもできます。

歯科用CTの安全性について

歯科用CTはとても安全に使用することができます。通常のレントゲン撮影やCT撮影を行う上で、放射線による被ばくが発生しますが、歯科用CTが健康に及ぼす影響は全くないと言えます。

歯科用CTの被ばく量は医科用CTの1/10程度であり、また撮影範囲が頭頚部に限定されていることから放射線の被ばくはとても少ないです。その被ばく量は、東京〜ニューヨークを飛行機で移動するのと同じ程度、または日本における年間の自然放射による被ばく量の1/10以下と言われており、人体に対する有害な影響はほとんどありません。

さらに、万が一、妊娠に気付かずに歯科用CTを撮影してしまった場合でも、被ばく量が少ないこと、撮影範囲が腹部と離れていること、防護用エプロンを着用していることから、胎児への影響はほとんど考えられません。ただし、妊娠の可能性がある場合は、あらかじめ担当医にお伝えください。

一般的に、CTなど、レントゲン撮影では『リスクとベネフィット』という考え方があります。つまり、患者にとってのリスク(被ばくの危険性)よりも、撮影によって得られるベネフィット(正確な診断ができるという利益)が大きいと判断される場合に、撮影が行われるというものです。そのため、すべての患者様にCT撮影が必須というわけではなく、歯科医師が本当に必要と判断した時以外は撮影の提案をすることはないため、ご安心ください。

歯科用CT撮影を行う治療内容と、得られるメリット

それでは、具体的にはどのような処置に対して歯科用CTによる撮影が行われるのでしょうか。撮影によって得られるメリットと合わせてご紹介します。

インプラント治療

インプラントを支えるために必要な骨の厚みや量、骨の質を見極めることができます。また、血管や神経の走行や上顎洞までの距離を計測することで、安全にインプラント手術を行う手助けをします。
既に埋入されているインプラントの炎症の有無や骨の安定性を診断するのにも役立ちます。

矯正治療

上あごと下あごの位置関係や骨格のバランスを評価し、お顔に調和した美しい歯並びを実現することに役立ちます。また、埋まっている親知らずや顎関節の状態を把握するのにも役立ちます。また、歯を動かすための骨の厚みを確認することで、矯正治療後に歯茎の変化を防止できます。

顎関節症治療

顎関節の骨の形や、上下の骨の位置関係を確認できます。また、お口を閉じた状態と開けた状態との画像を見比べることによって、顎関節の動きの左右差を検出することができます。

親知らず抜歯

親知らずの埋まっている位置だけでなく、親知らずの歯根の形や前の歯との位置関係を事前に評価することで、スムーズな処置が可能になります。また、血管や神経との距離を正確に計測できるため、安全に抜歯を行うことができます。

根管治療(歯根破折の状態)

歯根の数や形は人それぞれ異なります。CTによる評価は、歯根の位置や曲がり具合を正確に確認し、歯根の先端に存在する炎症の大きさを正確に把握できます。歯根が割れている場合、割れる位置によっては通常のレントゲン撮影では写ってきませんが、CTで様々な角度から確認することで割れている場所を診断できます。

歯周病治療

歯を支える骨の量や、歯周病によって骨が溶けてしまっている部分を正確に診断できます。また、歯周病の手術前にCT撮影を行うことで、手術範囲を最小限に抑えることができ、安全で低侵襲な処置が可能となります。

通常のレントゲン撮影の方がメリットが大きい場合も

これまでCT撮影のメリットを記載してきましたが、通常のレントゲン撮影にも優れた点があります。

CT撮影では、口腔内の金属の周囲にアーチファクトというノイズが出現してしまい、画像が荒れて診断性能が落ちてしまうことがあります。一方で、通常のレントゲン撮影の方が金属と歯の境目にある虫歯や、金属が装着された歯の歯周病の状態を評価するのに適しています。さらに、通常のレントゲン撮影の方が顎の骨や歯の状態を一目で確認しやすかったり、手軽に撮影できることから、処置前と処置後の比較がしやすかったりします。

このように、用途によって撮影の方法を使い分けることが重要です。

まとめ

いかがでしょうか。今回は歯科医院でCT撮影を行うべき状況や、歯科用CTのメリットについて解説しました。

歯科用CTの撮影には必ず被ばくを伴いますが、最新機種では低被ばくで高品質のCT撮影が可能となります。CT撮影を行うことで、通常のレントゲン撮影では分からないような詳細な情報を得ることができ、より正確な診断が可能となります。また、歯科用CTは特別な診断方法というわけではなく、顎関節症治療、歯周病治療、根管治療などでは健康保険適応範囲内で撮影することも可能です。

さらに、CT撮影は保険適応外の治療にも幅広く使用されます。特に、インプラント治療を受ける場合にはCT画像を使用した診断は必須と言えるでしょう。学会からも、患者様の安全を考えて、インプラント治療前にはCT撮影を100%行うべきであると推奨されています。

歯科用CTを使用した精密検査を行えるかどうかが、歯科医院選びのポイントになるかもしれません。

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「いつから矯正治療を始めれば良いの?」「矯正治療に年齢制限はあるの?」という方へ

「子どもの歯並びをきれいしてあげたい」「将来のために今やっておくべきかな?」
こう思われている保護者の方は多いかと思います。しかし、矯正治療を始めるタイミングは、ご自身では判断が難しいですよね。

今回は、「いつから矯正治療を始めればいいの?」という方、または「矯正治療に年齢制限はあるの?」という方に向けて、乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期の年齢別アプローチについて解説していきます。

はじめに

矯正治療は行う時期によって、できること、治療の内容、使用する装置などに特徴があります。今回は乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期それぞれの矯正治療の特徴について解説します。

乳歯列期の矯正

乳歯列期とは

「乳歯列期」とは、乳歯(子供の歯)が全て生え揃ってから、永久歯(大人の歯)が生え始めるまでの時期を指します。

初めて乳歯が生えるのは生後6-7か月頃、たいていは下あごの前歯です。それから順番に生えていき、3歳ごろに20 本の乳歯が生え揃います(乳歯列の完成です)。
永久歯が生え始めるのは6歳頃からなので、3歳から6歳前後までを「乳歯列期」と言います。

早期介入のメリット

矯正治療は永久歯が生えてきてから行うもの、というイメージがありますが、乳歯列期でも矯正治療を行う場合があります。

乳歯列期の子どもは著しく成長していきます。歯を支えるあごの骨も、体の成長に合わせて大きく変化していきます。成長の過程で上あごと下あごの大きさや位置関係のバランスが崩れてしまうことで、将来的に永久歯のかみ合わせが悪くなってしまう可能性があります。そのため、あごが著しく成長する乳歯列期の矯正治療は、将来の生えてくる永久歯のための土台づくりとなります。

乳歯列期における理想的な歯並びとは、上の歯が下の歯より外側にあり、歯と歯の間にすき間があることです。下の歯が上の歯より外側にある咬み合わせ、いわゆる受け口は「反対咬合」もしくは「交叉咬合」といいます。自然に改善することは難しい咬み合わせなので、できるだけ早く矯正治療で正しい咬み合わせに治す必要があります。

また、乳歯列期ですき間のない歯並びは、一見問題がなさそうに見えます。しかし、乳歯と生えかわる永久歯は乳歯よりも大きいため、乳歯列期に歯と歯のすき間がないと永久歯列期ででこぼこの歯並びになる可能性が高いです。このような場合も、乳歯列期からあごの大きさを広げる事で永久歯が生えてくる場所を確保することができます。

乳歯列期の治療オプション

乳歯列期では、反対咬合(受け口)や交叉咬合(奥歯で咬み合わせがずれている状態)、開咬(前歯で咬めない状態)などの不正咬合がある場合、矯正装置を用いて歯並びの改善を行います。

当院では「プレオルソ」というマウスピース型の矯正装置を使用します。プレオルソは歯に大きな負担をかけることなく、歯やあごを移動させ、不正咬合を改善します。また、口呼吸から鼻呼吸に促すことができたり、舌の正しい位置や正しい発音をトレーニングできる効果もあるため、MFTを同時に行うことで正しい口腔機能の獲得を目指します。

混合歯列期の矯正

混合歯列期とは

混合歯列期とは、乳歯から永久歯への生え代わりが始まり、乳歯・永久歯の両方がお口の中に存在する時期のことを指します。一般的に、永久歯は6歳頃に下あごの前歯や上あごの第一大臼歯(いわゆる6歳臼歯)から生え始めます。全ての乳歯が生え代わるのが12歳前後なので、6歳から12歳前後までを「混合歯列期」と言います。

混合歯列期だからできること

混合歯列期に行う矯正治療のことを、第一期矯正治療と言います。第一期矯正治療は、今咬み合わせで困っていることはもちろんですが、それに加えて将来生えてくる永久歯のための土台作りを目的に行います。具体的には、上あごと下あごの骨格的なバランスを整えること、咬みやすい歯並びにすること、あごの成長に悪影響を与えるものを取り除くこと、永久歯が正しい位置に生えてくるよう誘導すること、などが挙げられます。

混合歯列期の一番の大きなメリットは成長期であることです。体の成長と同時にあごの骨も成長していきますが、成長期前に上下のあごのバランスが乱れている場合、放置してしまうと成長に伴いますます咬み合わせが悪くなっていきます。このタイミングで矯正治療を行うことにより、上下のあごのバランスを骨格的に整え、将来的によい歯並びとなるよう誘導することができます。

歯はあごの骨に支えられているのですが、歯に対してあごの小さなお子さんは全ての歯をきれいに並べる場所が足りないため、でこぼこの歯並びとなってしまいます。混合歯列期では、あごの骨と骨の継ぎ目(縫合)が完全に固まっていないため、あごを広げる治療が可能となります。あごを広げることで歯を並べる場所を確保できるため、でこぼこの改善が期待できます。乳歯が全て生え代わり永久歯列期となるころには縫合が完全に骨化してしまうため、あごの拡大は期待できません。

また、混合歯列期のお子さんはMFT(口腔機能療法、Oral Myofunctional Therapy)という、お口の周りの筋肉のトレーニングの効果が得られやすい時期です。MFTについては別の記事で詳しく解説しますので、ぜひご覧になってみてください。

保護者の方に協力してほしいこと

混合歯列期に行う矯正治療では、取り外し式の装置を使用する場合が多いです。取り外し式の装置は使った時間がそのまま効果となって現れるため、お子さん本人の協力が必須となります。まだ年齢の低いお子さんは慣れるまでは装置をうまく使えないこともありますので、保護者の方も使い方を覚え、一緒に頑張っていただきたいです。また、固定式の装置の場合は歯磨きがとても難しくなりますので、必ず仕上げ磨きをお願いいたします。

治療オプション

混合歯列期の矯正治療(=第一期矯正治療)では、お子さんのお口の状態に応じてあごを広げる取り外し式の装置や、でこぼこを整える固定式の装置などを使用します。

永久歯列期の矯正

永久歯列期とは

永久歯列期とは、乳歯が全て生え代わり、全て永久歯となる時期を指します。一般的に、永久歯列は7番目の歯が生えてくる12歳前後に完成します。親知らずは20歳前後に生えてきますが、ずっと骨の中に埋まったまま、生えてこない方もいます。

治療を始めるタイミングについて

永久歯列期で行う矯正治療を第二期矯正治療と言います。7番目の歯がまだ生えていなくても、乳歯が全て生え代わっていれば第二期矯正治療となりますが、10代前半の方と成人の方では治療を始めるタイミングが異なる場合があります。

10代前半の方は咬み合わせの状態によって治療開始のタイミングを考える必要があります。永久歯列期が完成する12歳前後は、身長が大きく伸びる第二期成長期が訪れます。この時期は身長の伸びと同時に下あごも大きく成長します。上の歯が前方に出ている上顎前突やでこぼこなどは、下あごの成長が矯正治療に有利に働くので、治療開始のベストなタイミングと言えるでしょう。逆に、下の歯が上の歯より前に出ている下顎前突では、矯正治療で前歯の咬み合わせを治しても、下あごが成長し、直ぐに反対咬合に戻ってしまいます。そのため、下顎前突の場合は身長の伸びが落ち着くのを待ってから治療開始する場合が多いです。ただし、直ぐに矯正治療を始められないからと言ってそのまま放置しておくのはおすすめできません。咬み合わせが悪い方は、舌の癖や上手く飲み込めないといったお口の機能異常があることが大半です。装置をつける前からMFT(お口周りの筋肉のトレーニング)を開始し、歯並びに影響する癖を改善しておくことが、矯正治療が終わってからの歯並びの安定につながります。

成人の方は成長が終了しており、上あごと下あごのバランスが変化することはないため、いつでも治療が始められます。年齢制限の上限もありません。ただし、矯正治療にかかる期間はおおよその目安として1年~3年と長期間となりますので、就職や結婚などのご予定がある場合や、遠方へ転居する可能性がある場合は事前に相談しておくことをおすすめします。また、必要な場合は、矯正治療に先立って虫歯や歯周病の治療を行います。

治療オプション

永久歯列期の矯正治療(=第二期矯正治療)では、ワイヤー矯正、マウスピース矯正を扱っております。ホワイトワイヤーなど、目立ちにくい装置もご用意しております。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期、それぞれに行う矯正治療の特徴について解説しました。

歯並びはひとりひとり個性があり、治療を始める時期や治療内容は一概には言えません。気になることがあれば、まずは矯正治療の専門ドクターに相談しましょう。お口の中を実際にみて、それぞれにあった治療プランをご提案します。

当院では無料矯正相談を行っております。いつでもお気軽にご相談ください。

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セラミック矯正について 通常の矯正治療との違い、メリットとデメリットを解説

「芸能人がやっているセラミック矯正ってなに?」

「私もセラミック矯正で歯並びをきれいにできるの?」

セラミック矯正という言葉をご存知でしょうか?つい先日にも芸能人の方がセラミック矯正を公表したことがニュースにもなり、聞いたことはあるという方は多いかと思いますが、治療法について正確に理解している人はまだまだ少ないかもしれません。インターネットでセラミック矯正について検索をすると、『デメリット』『後悔』『やばい』という単語が予測検索に出てくることもあり、不安を感じている方もいらっしゃると思います。

この記事では、「手軽に歯の見た目を改善したいのでセラミック矯正を考えている」「セラミック矯正で後悔したくない」という方に向けて、セラミック矯正の概要と矯正治療との違い、メリット・デメリットについて、歯科医師が解説していきます。

セラミック矯正とは

セラミック矯正とは、歯の形態や歯並びを改善する治療法です。通常、ご自身の歯を削ってセラミックの人工歯を装着することで、歯の外観を整えて美しい歯並びを実現します。この治療法は、一般的な矯正治療よりも短期間で終了することから、「クイック矯正」や「スピード矯正」とも呼ばれます。

ただし、少し注意が必要なポイントとして、歯科の教科書や学会発表では『セラミック矯正』という単語は使用されません。

削った歯に対してセラミックを被せて審美性を改善する治療は、厳密には「補綴治療」と呼ばれます。「補綴治療」とは歯や歯の一部を失った部分に対して人工物で歯を補う治療全般を指し、セラミックや、ブリッジ、インプラントなども補綴治療に分類されます。そのため、セラミックで見た目の改善を行う治療法は、正確には「セラミック補綴」や「審美歯科補綴治療」と表現されます。このような用語に厳格で、セラミック矯正という単語を好んで使用しない歯科医師もいますが、「セラミック矯正」という言葉が一般的に広まっているため、患者様に分かりやすい表現として使用される場合も多いようです。

このような背景から、セラミック矯正は歯科治療ではなく美容治療の一環として位置づけられることも多いですが、通常の矯正治療とは異なるメリットも存在します。しかしその一方で、デメリットも潜んでいます。セラミック矯正や歯科医院選びを失敗して後悔しないよう、メリットとデメリットを理解した上で検討できると良いでしょう。

矯正治療との違い

それでは、セラミック矯正と通常の矯正治療とはどのような違いがあるのでしょうか。

まずはじめに、いわゆる「出っ歯」「空きっ歯」「八重歯」「ガチャ歯」「口ゴボ」など、歯並びや噛み合わせの悪さを専門用語で「不正咬合」と呼びます。

矯正治療とは、マウスピースやワイヤーなどの矯正装置を用いて歯をゆっくりと動かすことで不正咬合を治し、上下のあごの噛み合わせを整え、きれいな歯並びを獲得する治療を指します。この治療には、見た目の改善だけではなく、奥歯も含めたバランスの良い噛み合わせを獲得できるメリットがあります。その結果、将来的な虫歯や歯周病のリスクを減らしたり、顎関節にかかる負担を軽減することができます。

一方で、セラミック矯正では前歯の見た目を改善することを目的としているため、歯の位置や噛み合わせには直接的な影響を与えません。歯を動かすというプロセスを伴わないため、厳密には矯正治療には分類されないのです。セラミック矯正は美容治療や審美治療といった側面を持つため、矯正専門の歯科医院ではなく、審美歯科や補綴治療に特化した歯科医院で施術されるケースが多いようです。

このように『矯正』という言葉を含んでいますが、セラミック矯正と通常の矯正治療とでは、患者様のお悩みに対して異なるアプローチを取っています。それぞれは全く異なる治療法であると理解しておくことが大切です。

セラミック矯正のメリット

ここでは、主に通常の矯正治療と比較した際の、セラミック矯正のメリットをご紹介します。

治療期間が短い

通常の矯正治療では、歯を動かす必要があるため一般的には治療期間が長くなります。矯正装置によって歯が動くスピードは、1か月に0.5mm〜1mm程度と言われており、治療が完了するまで2〜3年かかることも珍しくありません。

一方、セラミック矯正では『歯を削る』→『型を採る』→『セラミック装着』というプロセスで治療が進行します。そのため、場合によっては1〜2ヶ月で治療を終えることも可能です。短期間で美しい歯並びを実現できることが大きな利点です。
ただし注意点として挙げられるのは、セラミック装着前に虫歯や歯周病(歯肉炎)を治療する必要がある場合や、抜歯や神経を取る治療を行う場合があることです。その際には、もう少し長い治療期間が必要になります。これらの治療が必要な場合でも、通常の矯正治療よりも治療期間が長くなることは滅多にありません。

矯正装置が必要ない

通常の矯正治療ではワイヤーやマウスピースの装着が必要となります。ワイヤー矯正の場合は、慣れるまでは食事に不便を感じることが多く、またワイヤー周囲の清掃が必要になるため、歯磨きの手間がかかることがあります。マウスピース矯正では食事の制限はほとんどありませんが、1日20時間以上という装着時間を厳密に守らなければならず、食事後すぐに歯磨きを行ってマウスピースを装着する必要があります。また外した際のマウスピースの管理も必要です。

一方、セラミック矯正では歯を削った後に仮歯を装着しますが、仮歯と言っても見た目がかなり自然で、食事や歯磨きに関して不便を感じることはほとんどありません。そのため、装置に関する心配が少なく、治療が受けやすいという特長があります。

後戻りが起こらない

矯正治療で歯を動かすと後戻りする傾向があり、歯の位置が元に戻ろうとします。そのため、矯正治療後には保定装置を装着して後戻りを防ぐ必要があります。保定装置は数年間の装着が必要で、定期的な洗浄やメインテナンスが必要です。
セラミック矯正では歯を動かすプロセスがないため、後戻りの心配がほとんどありません。そのため、保定装置を使用するする必要がなく、治療後も見た目の美しさを持続させやすいという特長があります。

歯の形態や色味も改善することができる

「歯の色が黄色い」「古い詰め物が変色して目立つ」「生まれつき歯が細くてバランスが悪い」
このようなお悩みを持つ方にとって、通常の矯正治療だけでは解決が難しいことがあります。セラミック矯正では歯の形態や色味を理想的に整えることができ、これはセラミック矯正の最大のメリットと言えます。自然な歯の色に合わせたり、噛み合わせによってすり減ってしまった歯の形を整えたり、元々の歯よりも白い歯を手に入れることも可能です。
ただし、歯の色味を変化させる場合には、見える部分すべてにセラミックを装着する必要があるため、治療の本数が多くなることがある点は注意が必要です。

セラミック矯正のデメリット

セラミック矯正には通常の矯正治療にはないメリットがありますが、同時にデメリットや注意点も多く存在します。

歯や顎の骨の位置は改善されない

通常の矯正治療が『歯や顎の位置関係を整える治療』であるのに対し、セラミック矯正はあくまでも『歯並びを整えたように見せる治療』です。歯を動かすというプロセスがないため、奥歯の噛み合わせの問題を解決できないことがあります。また歯根(骨に埋まっている部分)と歯冠(お口の中に見えている部分)とで無理が生じてしまうと、将来的にセラミックが取れたり歯が折れるといったリスクがあります。

また歯の骨に埋まっている部分の位置に変化がないため、骨や歯茎や骨の位置も変化しません。そのため口元のバランスが思ったよりも改善されないことがあります。

歯を削る必要がある

セラミックを装着するために、歯を削る必要があります。削られた歯は元に戻ることはないので、健康な歯を失ってしまうということに注意が必要です。歯の寿命を考える上では、健康な歯を維持することが最も重要です。歯を削るという行為は、歯の寿命を短くする可能性があることを理解することが大切です。

よく分からないままセラミック矯正を始めて、歯を削る量に驚くことも少なくありません。歯を削られてから後悔しないように、治療内容を事前に理解することが重要です。

神経の除去や抜歯が必要なこともある

歯の向きや形を整える際に、神経を残したままで改善できない場合は歯の神経を除去したり、健康な歯を抜く必要が生じることがあります。

歯の神経を抜く際には根管治療が必要になり、治療期間が延びることがあります。一度不適切な根管治療が行われてしまうと、将来的に歯茎に痛みや腫れが出現することもあるでしょう。再治療が必要な場合、セラミックを除去する必要があり、最悪の場合は抜歯が必要なこともあります。さらに、セラミック矯正の治療中に神経の除去が不要でも、歯を削ったダメージによって数年後に神経が壊死する可能性も考えられます。その際には、改めてセラミックを除去して根管治療を行う必要があります。

通常の矯正治療でも歯を抜くことはありますが、基本的には噛み合わせのバランスやお口の健康に与える影響が最小限になるよう抜歯部位を検討します。例えば、犬歯は噛み合わせの維持にとても重要な役割があるため、通常の矯正治療で抜歯することはほとんどありません。しかし、八重歯のセラミック矯正の場合には、この犬歯が抜歯されてしまうケースがあるようです。噛み合わせのバランスが崩れると、顎関節への負担や、セラミックの破損や歯が割れるリスクが高まります。

将来的な虫歯・歯周病のリスクが上がる

セラミックを装着することで、歯とかぶせ物との間に微細な隙間ができます。丁寧な仮歯の調整や精密な型取りが行われない場合、この隙間から汚れや細菌が入り込む原因になってしまいます。細菌が繁殖することで虫歯になってしまったり、歯茎の痛みや腫れを引き起こすことがあります。

また装着されたセラミックの精度が低い場合や、歯磨きが難しい環境になっている場合、歯茎の赤みを引き起こすことがあります。そのまま放置しておくと、歯肉炎が発症したり、さらには歯周病に進行することで、歯茎が下がったり歯がぐらつく原因になります。丁寧な治療を受けることはもちろん重要ですが、治療を急ぐあまり歯磨き指導などの歯肉炎予防治療を受けていない場合は注意が必要かもしれません。

まとめ

いかがでしょうか。今回はセラミック矯正について解説しました。

セラミック矯正では、治療期間を短縮することができ、また歯の形や色も理想的に整えることができるというメリットが存在します。しかし、その一方で、『歯を削る』『神経を抜く』『通常の矯正治療では残せる歯を抜く』というデメリットも考慮する必要があるでしょう。

セラミック矯正が良いのか、通常の矯正治療の方が向いているのかは、お口の中の状態によって異なります。単に「流行っているから」「他の人がやっているから」という理由ではなく、メリットとデメリットをよく理解した上で、後悔しない選択をすることが大切です。

当院では、矯正治療の無料相談を行っており、ご希望の場合はセラミック矯正についてのカウンセリングもご案内することができます。お悩みや不安について、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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より白い歯を手に入れるために、歯科医院で医療ホワイトニングを行うべき理由

「歯科医院とホワイトニングサロンと、どちらに行けば良いの?」

「歯科医院での医療ホワイトニングの値段は?」

魅力的な笑顔のために、白く輝く歯は特に重要な要素の一つであると言えるでしょう。歯の黄ばみが気になっていたり、歯の色味にコンプレックスを持っていると、人前で自信をもって笑えないこともあるかと思います。

歯のホワイトニングにはいくつかの方法があり、その中でも「ホワイトニング用歯磨き粉」「ホワイトニングサロンでのセルフホワイトニング」「歯科医院での医療ホワイトニング」はよく聞かれる選択肢です。

「ホワイトニング用歯磨き粉」については以前の記事で詳しく解説しています。気になる方は、↓の記事も併せて読んでみてください。

ホワイトニング用の歯磨き粉で本当に歯は白くなるの?

今回の記事では、「ホワイトニングサロンで行うセルフホワイトニングと、歯科医院で行う医療ホワイトニングとの違いが分からない」という方に焦点を当てて、歯科医院での医療ホワイトニングの特徴や、歯科医院で行うメリットについて、歯科医師が解説していきます。

ホワイトニングに使用される薬剤について

まず初めに、歯の着色には2種類の原因があります。
➀エナメル質の表面(外側)に付着した色素(ステインとも呼ばれます)と、➁エナメル質の内側に沈着した色素、です。

ホワイトニングサロンでのセルフホワイトニングで使用される薬剤では、エナメル質外側の着色やステインを除去することができます。そのため、歯が持っている本来の色味に近づけることができ、ホワイトニング効果を得ることができます。ただし、効果があるのは歯の表面に付着した色素のみに限定されており、歯の内部に沈着した色味には影響がありません。

一方、歯科医院での医療ホワイトニングでは、エナメル質内側の着色を分解することができます。これにより、元々の歯の色味よりも白い歯を手に入れることができます。主に『過酸化水素』や『過酸化尿素』といった薬剤が使用されますが、これらは劇薬に指定されており、歯科医師・歯科衛生士が在籍しているクリニックでのみ扱うことができます。

このように歯科医院での医療ホワイトニングでは、知識と経験豊富なプロフェッショナルが効果の高い薬剤を用いて施術を行うため、ホワイトニング効果が高いという特徴があります。セルフホワイトニングとの違いは、施術の専門性と使用される薬剤の効果にあると言えます。

歯科医院で医療ホワイトニングを行うメリット

プロフェッショナルによる施術を受けることができる

当たり前のことですが、歯科医院には歯科医師・歯科衛生士といった国家資格を持つ、お口に関する専門家がいます。歯やお口のプロフェッショナルによる施術ですので、施術中の不快感やトラブルに即座に対応することができます。またそれだけでなく、施術前に分かりやすいカウンセリングを受けられることや、施術後のアフターケアによってホワイトニング効果を持続させるための適切なアドバイスを受けることができます。

また「歯の内側の着色を分解できる薬剤を使用する」といっても、歯の表面に歯石やプラークが付着していてはせっかくの効果が発揮できません。歯科医院では施術前に歯のクリーニングを行うことで、ホワイトニング効果をより実感することができます。

虫歯や歯周病を早期発見することができる

ホワイトニングでせっかく歯を白くしたのに、虫歯でその歯を削る必要があると言われたらとてもショックですよね。手に入れた白さを長持ちさせるためには、ホワイトニングした歯が健康を維持することがとても重要です。
歯科医院では虫歯や歯周病で悩むことが無いように、専門家によるチェックや、レントゲンでの確認を行うことができます。つまり、歯の白さだけでなく、お口の中の健康も手に入れることができます。

万が一、虫歯や歯周病が見つかってしまった際でも、治療とホワイトニングとのバランスを考えた治療計画を提案してもらうことができます。適切な治療を受けることで、健康で美しい歯を大切にすることができるのです。

知覚過敏に対応できる

ホワイトニングを受けるとき、最も頻繁に起こるデメリットとして、施術中や施術後の知覚過敏が挙げられます。この知覚過敏によって歯の神経が刺激に対して敏感になり、施術中に痛みが発生したり、施術後に冷たい飲食物に対して不快感を引き起こすことがあります。

ホワイトニングの施術中、薬剤が歯に浸透して色素を分解する過程で、一時的に知覚過敏を感じることがあります。しかし、施術中の知覚過敏は通常は軽度で、施術後にすぐに治まることがほとんどです。稀に強い痛みを伴う場合には、施術を中断することもありますが、その際も担当の歯科医師や歯科衛生士と相談することができます。

施術後にも知覚過敏が発生することがあります。ホワイトニング剤が一時的にエナメル質表面のコーティングを剝がすことで、歯の神経が外部からの刺激をより敏感に感じられるようになるためです。そのコーティングは自然に復活するため、一般的には数日から数週間で施術後の知覚過敏は自然に収まります。施術直後に歯のパックを行ったり、歯科医院で専売の知覚過敏用歯磨き粉を処方されることで、知覚過敏症状を緩和したり予防したりすることができます。

歯の知覚過敏に不安がある方も、施術前に専門家からのカウンセリングを受けることで、不安を軽減して、最小限の不快感で白い歯を手に入れることができます。

白くなるかどうかの適切な診断ができる

ホワイトニングの際に注意すべき点として、施術に使用される薬剤がご自身の歯(天然歯)にのみ効果があるということです。レジン(樹脂)でできた詰め物や、セラミックなどのかぶせ物は白くなりません。

歯科医院での医療ホワイトニングの前に、お口の中のチェックを受けたりレントゲンを撮影したりすることで、白くなる部分と白くならない部分の診断を行います。もし詰め物やかぶせ物など、ホワイトニングで白くならない部分がある場合は、ホワイトニング施術後の色味に合わせてやり替えることで、ムラのないバランスの取れた白さを手に入れることができます。

またホワイトニング薬剤の効果は多少個人差があり、白くなりやすい歯と白くなりづらい歯があります。経験豊富なプロフェッショナルに相談することで、施術前に白くなりやすさの診断を受けることができ、適切なホワイトニングの方法や回数についてアドバイスを受けることができます。自分の歯に合わせた計画を立てることで、満足度の高い白さを実現することができます。

お口全体のトータルバランスを考えた美しさを手に入れられる

魅力的な笑顔のためには、歯を白くするだけで十分でしょうか。
白い歯はもちろん大切な要素ですが、美しい笑顔のためにはそれだけでは足りません。きれいに整った歯並びも、笑顔の印象を大きく左右します。さらに、歯だけではなく、健康で引き締まった歯茎の見た目や、横顔のバランスなども重要なポイントとなります。

歯科医院でホワイトニングのカウンセリングを受けることで、矯正治療やセラミックを使用した審美歯科治療など、見た目だけでなく噛み合わせのバランスを考えたオーダーメイドの審美治療について詳しく聞くことができます。魅力的な笑顔を手に入れるだけでなく、それが最大限長持ちするよう、トータルバランスを検討することが重要です。

歯科医院での医療ホワイトニングの値段は?

クリニックで使用している薬剤や地域によっても差がありますが、歯科医院で行うオフィスホワイトニングの場合は一度の薬剤塗布で¥10,000前後(一回の来院で複数回薬剤塗布する場合は¥30,000~50,000程度)が相場になっています。また、ご自宅で行うホームホワイトニングは¥20,000〜50,000程度で、ホワイトニングをする歯の本数によっても異なることがあります。

オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを同時に行うデュアルホワイトニングや、短期間で複数回の施術を行ってしっかりと白くするホワイトニングコースなど、クリニックによって様々なプランが提供されています。

歯科医院での医療ホワイトニングは「効果の高い薬剤」を使用した「プロフェッショナルによる施術」といった特徴があるため、ホワイトニングサロンでのセルフホワイトニングに比べると値段は高めです。しかし、確かな効果と施術に対する安心感を考えるとコストパフォーマンスはとても高いと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。今回は歯科医院での医療ホワイトニングのメリットについて解説しました。
ホワイトニング施術後の歯の色味や費用で後悔しないように、ホワイトニング前にしっかりとカウンセリングを受け、またご自身に合った方法やプランについて十分な説明を受けることがとても重要です。お口の専門家に相談して、歯の色味に対する希望や予算に応じた最適なホワイトニング方法を検討しましょう。

当院では、白い歯と魅力的な笑顔を手に入れるためのホワイトニング相談は無料で行っております。ぜひお気軽にご相談ください。

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ホワイトニング用の歯磨き粉で本当に歯は白くなるの?

「歯の黄ばみがコンプレックス・・・」

「ホワイトニングに興味はあるけど,手軽なものから始めたい」

テレビCMや広告など,メディアでホワイトニング用歯磨き粉について耳にしたことがある方は多いと思います。一見,歯を白くして笑顔に自信を持たせてくれそうな効果が期待できそうですが,実際にはどれほどの効果があるのでしょうか?また,より効果的な使い方などはあるのでしょうか?

この記事では,「歯の黄ばみ・歯の着色を改善したい」「歯磨き粉で手軽にホワイトニングしたい」という方に向けて,歯の着色の原因,ホワイトニング用歯磨き粉の成分や実際の効果,ホワイトニング用歯磨き粉の効果的な使い方について,歯科医師が解説していきます。

はじめに

美しい白い歯は,古くから健康的な笑顔の象徴ともされており,白い歯を手に入れることで自信を高めることも可能です。しかし,逆に歯についてのコンプレックスを抱えていると,人前で口元を隠す癖がついたり,笑顔を作ることに抵抗を感じることもあります。

ある調査では,20代の女性のうち約90%以上が歯にコンプレックスを抱えており,その中でも「歯並び」よりも「歯の黄ばみ・着色」を気にしていると回答した人が最も多いと言われています。

歯を白くするために,様々な方法が試されてきました。その中でも,ホワイトニング用歯磨き粉は手軽な方法として幅広く知られており,市場にはさまざまな商品が登場しています。テレビや広告で目にしたことがある方も多いかもしれませんね。
しかしながら,気になるのはホワイトニング用歯磨き粉実際の効果です。果たして,歯科医院で行う医療ホワイトニングに匹敵する効果があるのでしょうか?

ホワイトニング用歯磨き粉の詳細な説明の前に,まずは歯の着色の原因について解説していきます。

歯の変色のメカニズムと原因

歯の変色は多くの要因によって引き起こされますが,これらの要因は「外的要因」と「内的要因」に分類されます。これらのメカニズムを理解することで、着色に対する対策を考えることができ,ホワイトニング用歯磨剤の効果や限界を理解する手助けとなります。

外的要因

外的要因は主に歯の表面の色素沈着のことを指します。
この色素沈着は,日常の飲食物,または習慣によって起こります。コーヒーや紅茶,ワインなどの色の濃い飲み物,カレーやソースといった色の濃い食品が主な原因として考えられており,色素成分と唾液の成分が反応することでステインと呼ばれる着色汚れとなります。さらに,タバコや不適切な口腔ケアもステインの主な要因となります。
これによって,歯のエナメル質に色素が吸着し,歯の着色や黄ばみの原因となります。

内的要因

内的要因は歯の内側の組織や構造に起因する着色です。飲食物の色素が歯の内面に沈着するだけでなく,加齢による象牙質の黄ばみや,遺伝的な要因や健康状態も歯の色に影響を与えると言われています。また虫歯や外傷によって歯の神経がダメージを受けると,局所的に歯の内側から変色が起こることもあります。

この外的要因と内的要因が組み合わさることで,歯の色に影響を与えることがあります。しかし,その組み合わせは人それぞれ異なります。だからこそ,両方の要因に対するアプローチが重要なのです。

ホワイトニング用歯磨剤の効果とは?

ホワイトニング用歯磨剤には,ホワイトニング効果のある成分が含まれており,歯の白さを引き出すと謳われています。その主要成分や効果について,詳しく見ていきましょう。

主要成分の概要と働き

研磨剤:歯の表面の汚れや着色を取り除くために使用される微粒子です。

発泡剤:歯磨き粉が泡立ちやすくなり,歯の表面に付着した汚れを浮かせる効果があります。

香料と甘味料:さっぱり感を向上させます。ミントや柑橘系の香りが一般的で,甘味料としてはキシリトールやソルビトールが使われています。

フッ化物:エナメル質を強化し、虫歯予防効果がある成分です。

抗菌剤:お口の中の細菌の繁殖を抑えます。薬用成分ともいわれます。

その他:歯茎の健康をサポートするビタミンやミネラル,知覚過敏抑制剤が含まれることもあります。

ホワイトニング用歯磨き粉の効果

この中で,ホワイトニング効果があると考えられるのは「研磨剤」です。

メーカーや製品によって異なりますが,「炭酸カルシウム」「ポリエチレングリコール」「シリカ」「ピロリン酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」「酸化アルミナ」「含水ケイ酸」など,さまざまな薬剤が開発され使用されています。

主な作用は『ステインを吸着して・浮かせて・取り除く』といった効果を持つようです。

ここで注目すべきは,これらの成分は歯の表面のステインをある程度取り除く効果があるものの,歯の内面に作用する成分は含まれていないという点です。つまり,着色の内的要因にアプローチはできないということです。

また外的要因であるステインに対しても,効果は限られていると考えられています。繰り返し使用することで,歯の着色が少しずつ軽減される可能性はあるものの,即座に劇的な変化を期待することは難しく,また広範囲の頑固な着色には効果は限定的かもしれません。

さらに,粗い研磨剤が含まれた歯磨き粉を用いて強く磨きすぎてしまうと,歯の表面に微細な傷がついてしまい,逆に着色の原因となる可能性があるため,注意が必要です。

ホワイトニング用歯磨き粉の効果的な活用法

美しい白い歯を手に入れるためには,ホワイトニング用歯磨き粉など,さまざまな選択肢があります。その中で,歯科医院で行う医療ホワイトニングとホワイトニング用歯磨き粉について比較し,また継続的なケアの重要性について考えてみましょう。

医療ホワイトニングでより白い歯へ

元々の歯の色よりも白い歯を手に入れるためには,医療ホワイトニングが必要です。ホワイトニング用歯磨き粉やセルフホワイトニングでは,歯の変色の外的要因にしかアプローチできませんが,医療ホワイトニングでは歯の内部変色にも効果を発揮します。歯科医院でのみ扱える薬剤を使用することで,安全かつ効果的に白さを実感できます。

ホワイトニング用歯磨き粉で着色除去と再着色予防

ホワイトニング用歯磨き粉は,日常に取り入れやすい手軽な方法です。継続的な使用によってある程度の着色除去が期待できますが,歯科医院での処置ほどの効果はありません。着色が少ない方や,歯科医院で着色除去やホワイトニングの施術を受けた後の着色予防として使用するのが効果的です。

ホワイトニング用歯磨き粉の賢い活用法

歯磨きのタイミング

通常の歯磨きと同じタイミングで行いましょう。食後に歯磨きをすることをおすすめします。無糖であっても,特にコーヒーや紅茶など,ステインの原因となる飲食物を摂取した後には,歯磨きを行うことが着色予防に役立ちます。

適量の使用と優しい磨き方

歯磨き粉の量は指示通りに守り,歯や歯茎を傷つけないよう,軽い力で丁寧に磨くことが大切です。過度な量や圧力は逆効果になってしまいます。

定期的な使用

ホワイトニング用歯磨き粉の効果を実感したり,再着色を予防するためには,定期的な使用が必要です。毎日の使用を心がけましょう。

歯科医院での定期検診

歯科医院での定期的な検診を受けることで,自分では難しい着色の除去が可能となります。また,着色の状況や虫歯・歯周病のリスクも含めて,ご自身に合ったアドバイスや歯磨き粉の提案をしてくれるでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。今回はホワイトニング用歯磨き粉の実際について解説しました。
ホワイトニング用歯磨き粉の効果に関する意見はさまざまですが,実際には当院でも取り扱っております。ただし,歯磨き粉で着色除去を期待するというよりかは,医療ホワイトニング後の再着色予防としてご提案することがほとんどです。

白い歯を手に入れるための最適な方法や,普段お使いの歯磨き粉に関するアドバイスもおこなっております。ぜひお気軽にご相談ください。

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