セラミック矯正について 通常の矯正治療との違い、メリットとデメリットを解説

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「芸能人がやっているセラミック矯正ってなに?」

「私もセラミック矯正で歯並びをきれいにできるの?」

セラミック矯正という言葉をご存知でしょうか?つい先日にも芸能人の方がセラミック矯正を公表したことがニュースにもなり、聞いたことはあるという方は多いかと思いますが、治療法について正確に理解している人はまだまだ少ないかもしれません。インターネットでセラミック矯正について検索をすると、『デメリット』『後悔』『やばい』という単語が予測検索に出てくることもあり、不安を感じている方もいらっしゃると思います。

この記事では、「手軽に歯の見た目を改善したいのでセラミック矯正を考えている」「セラミック矯正で後悔したくない」という方に向けて、セラミック矯正の概要と矯正治療との違い、メリット・デメリットについて、歯科医師が解説していきます。

セラミック矯正とは

セラミック矯正とは、歯の形態や歯並びを改善する治療法です。通常、ご自身の歯を削ってセラミックの人工歯を装着することで、歯の外観を整えて美しい歯並びを実現します。この治療法は、一般的な矯正治療よりも短期間で終了することから、「クイック矯正」や「スピード矯正」とも呼ばれます。

ただし、少し注意が必要なポイントとして、歯科の教科書や学会発表では『セラミック矯正』という単語は使用されません。

削った歯に対してセラミックを被せて審美性を改善する治療は、厳密には「補綴治療」と呼ばれます。「補綴治療」とは歯や歯の一部を失った部分に対して人工物で歯を補う治療全般を指し、セラミックや、ブリッジ、インプラントなども補綴治療に分類されます。そのため、セラミックで見た目の改善を行う治療法は、正確には「セラミック補綴」や「審美歯科補綴治療」と表現されます。このような用語に厳格で、セラミック矯正という単語を好んで使用しない歯科医師もいますが、「セラミック矯正」という言葉が一般的に広まっているため、患者様に分かりやすい表現として使用される場合も多いようです。

このような背景から、セラミック矯正は歯科治療ではなく美容治療の一環として位置づけられることも多いですが、通常の矯正治療とは異なるメリットも存在します。しかしその一方で、デメリットも潜んでいます。セラミック矯正や歯科医院選びを失敗して後悔しないよう、メリットとデメリットを理解した上で検討できると良いでしょう。

矯正治療との違い

それでは、セラミック矯正と通常の矯正治療とはどのような違いがあるのでしょうか。

まずはじめに、いわゆる「出っ歯」「空きっ歯」「八重歯」「ガチャ歯」「口ゴボ」など、歯並びや噛み合わせの悪さを専門用語で「不正咬合」と呼びます。

矯正治療とは、マウスピースやワイヤーなどの矯正装置を用いて歯をゆっくりと動かすことで不正咬合を治し、上下のあごの噛み合わせを整え、きれいな歯並びを獲得する治療を指します。この治療には、見た目の改善だけではなく、奥歯も含めたバランスの良い噛み合わせを獲得できるメリットがあります。その結果、将来的な虫歯や歯周病のリスクを減らしたり、顎関節にかかる負担を軽減することができます。

一方で、セラミック矯正では前歯の見た目を改善することを目的としているため、歯の位置や噛み合わせには直接的な影響を与えません。歯を動かすというプロセスを伴わないため、厳密には矯正治療には分類されないのです。セラミック矯正は美容治療や審美治療といった側面を持つため、矯正専門の歯科医院ではなく、審美歯科や補綴治療に特化した歯科医院で施術されるケースが多いようです。

このように『矯正』という言葉を含んでいますが、セラミック矯正と通常の矯正治療とでは、患者様のお悩みに対して異なるアプローチを取っています。それぞれは全く異なる治療法であると理解しておくことが大切です。

セラミック矯正のメリット

ここでは、主に通常の矯正治療と比較した際の、セラミック矯正のメリットをご紹介します。

治療期間が短い

通常の矯正治療では、歯を動かす必要があるため一般的には治療期間が長くなります。矯正装置によって歯が動くスピードは、1か月に0.5mm〜1mm程度と言われており、治療が完了するまで2〜3年かかることも珍しくありません。

一方、セラミック矯正では『歯を削る』→『型を採る』→『セラミック装着』というプロセスで治療が進行します。そのため、場合によっては1〜2ヶ月で治療を終えることも可能です。短期間で美しい歯並びを実現できることが大きな利点です。
ただし注意点として挙げられるのは、セラミック装着前に虫歯や歯周病(歯肉炎)を治療する必要がある場合や、抜歯や神経を取る治療を行う場合があることです。その際には、もう少し長い治療期間が必要になります。これらの治療が必要な場合でも、通常の矯正治療よりも治療期間が長くなることは滅多にありません。

矯正装置が必要ない

通常の矯正治療ではワイヤーやマウスピースの装着が必要となります。ワイヤー矯正の場合は、慣れるまでは食事に不便を感じることが多く、またワイヤー周囲の清掃が必要になるため、歯磨きの手間がかかることがあります。マウスピース矯正では食事の制限はほとんどありませんが、1日20時間以上という装着時間を厳密に守らなければならず、食事後すぐに歯磨きを行ってマウスピースを装着する必要があります。また外した際のマウスピースの管理も必要です。

一方、セラミック矯正では歯を削った後に仮歯を装着しますが、仮歯と言っても見た目がかなり自然で、食事や歯磨きに関して不便を感じることはほとんどありません。そのため、装置に関する心配が少なく、治療が受けやすいという特長があります。

後戻りが起こらない

矯正治療で歯を動かすと後戻りする傾向があり、歯の位置が元に戻ろうとします。そのため、矯正治療後には保定装置を装着して後戻りを防ぐ必要があります。保定装置は数年間の装着が必要で、定期的な洗浄やメインテナンスが必要です。
セラミック矯正では歯を動かすプロセスがないため、後戻りの心配がほとんどありません。そのため、保定装置を使用するする必要がなく、治療後も見た目の美しさを持続させやすいという特長があります。

歯の形態や色味も改善することができる

「歯の色が黄色い」「古い詰め物が変色して目立つ」「生まれつき歯が細くてバランスが悪い」
このようなお悩みを持つ方にとって、通常の矯正治療だけでは解決が難しいことがあります。セラミック矯正では歯の形態や色味を理想的に整えることができ、これはセラミック矯正の最大のメリットと言えます。自然な歯の色に合わせたり、噛み合わせによってすり減ってしまった歯の形を整えたり、元々の歯よりも白い歯を手に入れることも可能です。
ただし、歯の色味を変化させる場合には、見える部分すべてにセラミックを装着する必要があるため、治療の本数が多くなることがある点は注意が必要です。

セラミック矯正のデメリット

セラミック矯正には通常の矯正治療にはないメリットがありますが、同時にデメリットや注意点も多く存在します。

歯や顎の骨の位置は改善されない

通常の矯正治療が『歯や顎の位置関係を整える治療』であるのに対し、セラミック矯正はあくまでも『歯並びを整えたように見せる治療』です。歯を動かすというプロセスがないため、奥歯の噛み合わせの問題を解決できないことがあります。また歯根(骨に埋まっている部分)と歯冠(お口の中に見えている部分)とで無理が生じてしまうと、将来的にセラミックが取れたり歯が折れるといったリスクがあります。

また歯の骨に埋まっている部分の位置に変化がないため、骨や歯茎や骨の位置も変化しません。そのため口元のバランスが思ったよりも改善されないことがあります。

歯を削る必要がある

セラミックを装着するために、歯を削る必要があります。削られた歯は元に戻ることはないので、健康な歯を失ってしまうということに注意が必要です。歯の寿命を考える上では、健康な歯を維持することが最も重要です。歯を削るという行為は、歯の寿命を短くする可能性があることを理解することが大切です。

よく分からないままセラミック矯正を始めて、歯を削る量に驚くことも少なくありません。歯を削られてから後悔しないように、治療内容を事前に理解することが重要です。

神経の除去や抜歯が必要なこともある

歯の向きや形を整える際に、神経を残したままで改善できない場合は歯の神経を除去したり、健康な歯を抜く必要が生じることがあります。

歯の神経を抜く際には根管治療が必要になり、治療期間が延びることがあります。一度不適切な根管治療が行われてしまうと、将来的に歯茎に痛みや腫れが出現することもあるでしょう。再治療が必要な場合、セラミックを除去する必要があり、最悪の場合は抜歯が必要なこともあります。さらに、セラミック矯正の治療中に神経の除去が不要でも、歯を削ったダメージによって数年後に神経が壊死する可能性も考えられます。その際には、改めてセラミックを除去して根管治療を行う必要があります。

通常の矯正治療でも歯を抜くことはありますが、基本的には噛み合わせのバランスやお口の健康に与える影響が最小限になるよう抜歯部位を検討します。例えば、犬歯は噛み合わせの維持にとても重要な役割があるため、通常の矯正治療で抜歯することはほとんどありません。しかし、八重歯のセラミック矯正の場合には、この犬歯が抜歯されてしまうケースがあるようです。噛み合わせのバランスが崩れると、顎関節への負担や、セラミックの破損や歯が割れるリスクが高まります。

将来的な虫歯・歯周病のリスクが上がる

セラミックを装着することで、歯とかぶせ物との間に微細な隙間ができます。丁寧な仮歯の調整や精密な型取りが行われない場合、この隙間から汚れや細菌が入り込む原因になってしまいます。細菌が繁殖することで虫歯になってしまったり、歯茎の痛みや腫れを引き起こすことがあります。

また装着されたセラミックの精度が低い場合や、歯磨きが難しい環境になっている場合、歯茎の赤みを引き起こすことがあります。そのまま放置しておくと、歯肉炎が発症したり、さらには歯周病に進行することで、歯茎が下がったり歯がぐらつく原因になります。丁寧な治療を受けることはもちろん重要ですが、治療を急ぐあまり歯磨き指導などの歯肉炎予防治療を受けていない場合は注意が必要かもしれません。

まとめ

いかがでしょうか。今回はセラミック矯正について解説しました。

セラミック矯正では、治療期間を短縮することができ、また歯の形や色も理想的に整えることができるというメリットが存在します。しかし、その一方で、『歯を削る』『神経を抜く』『通常の矯正治療では残せる歯を抜く』というデメリットも考慮する必要があるでしょう。

セラミック矯正が良いのか、通常の矯正治療の方が向いているのかは、お口の中の状態によって異なります。単に「流行っているから」「他の人がやっているから」という理由ではなく、メリットとデメリットをよく理解した上で、後悔しない選択をすることが大切です。

当院では、矯正治療の無料相談を行っており、ご希望の場合はセラミック矯正についてのカウンセリングもご案内することができます。お悩みや不安について、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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