顎関節症かなと思ったときに知っておきたいこと

「顎がだるいときがあるけど,これは顎関節症なの?」

「顎関節症を治すときは何科に行けばよいの?」

突然ですが,歯科における3大疾患というのはご存知でしょうか。

歯科の3大疾患とは,「虫歯」「歯周病」「顎関節症」の3つを指します。しかし,虫歯や歯周病の治療のために歯科医院に通った経験がある方は多くいらっしゃると思いますが,顎関節症の治療で通院したことがある方はそれほど多くないと思います。そのため,顎関節症についてあまりご存知ない方も多いのではないでしょうか。

この記事では,「顎関節症の原因や治し方について知りたい」「顎関節症かもと思ったときにやってはいけないことを知りたい」という方に向けて,顎関節症の特徴や原因,通院のポイントやなどを日本顎関節学会専門医が解説していきます。

顎関節とは

顎関節は,頭蓋骨(上あご)と下あごの骨をつないでいる関節です。頭蓋骨を構成する骨のひとつである側頭骨のくぼみに対して,下顎骨の突起がはまり込むような構造になっています。その骨と骨の間には,関節円板と呼ばれる軟骨があり,周囲には靭帯や関節包,滑膜,さらには顎を動かすいくつかの筋肉が存在しています。

顎関節は耳の穴の前に位置しています。顎関節が動くことで口を開けたり閉じたりできるのですが,実際には下顎骨の突起が回転と滑走という動きを行っています。耳の穴の1cmくらい前に指を置いて口を大きく動かすと,窪みができたり骨が動いたりするのを触れることができます。ちなみに,人間の関節の中で「左右が協調して動く」「回転と滑走の2種類の動きをする」関節は顎関節だけです。このように顎関節がとても複雑な動きをすることで,食事や会話の際にスムーズに顎を動かすことができるのです。

顎関節症と,主な3つの症状

顎関節症は特定の症状や状態を指すものではなく,顎関節の骨とその周りの組織に起きる障害をとりまとめた病名です。主な症状は,疼痛障害・開口障害・関節雑音の3つがあります。

疼痛障害 - 口を開けると痛い 硬い物を噛むと痛む

疼痛(痛み)を感じる状態です。痛みが発生する場所は主に,顎関節(骨・軟骨・靭帯など)に起きる場合と,筋肉(咀嚼筋)に起きる場合があります。痛みを感じるタイミングは,「常に鈍い痛みや違和感がある」「大きく開けると痛い」「硬い物を噛むと痛みを感じる」など様々です。
しかし,顎関節症の痛みは主に誘発痛(刺激を受けたときに痛むこと)と言われているため,「何もしなくてもズキズキ痛む」「痛みで眠りが浅い」などの強い痛みの場合は別の疾患の可能性があります。

【患者様の主な症状】

  • あくびをしたり,大きな口を開けたりすると顎関節に痛みを感じる
  • 硬い物を噛むと痛い 力が入りづらい
  • 食事後にあごがだるい
  • 朝起きたときにあごの疲労感がある

開口障害 - 口が開かない

口が大きく開けられない・開けづらい状態です。大まかな目安としては,人差し指・中指・薬指の3本分よりも口が開かない場合に開口障害があると判断されます。

主な原因としては,顎関節内部の関節円板と呼ばれる軟骨の位置がずれることで,下あごの骨の動きが制限され,口が開けにくくなります。他にも関節や筋肉の痛みが原因で,あごが動かせなくなる場合もあります。また口が開けづらい状態が長く続くと,関節の可動域が狭くなり,口が開く量が制限されたままになってしまうこともあります。

顎関節症以外でも,親知らずの炎症や腫瘍などが原因で起こる開口障害もあるため,注意が必要です。

【患者様の主な症状】

  • 口が開けにくくなった
  • 大きく開けようとすると,痛みで開けられない
  • 口を開けると,あごの動きが左右非対称になる

関節雑音 - 口を開けると音がする

顎関節内部の関節円板と呼ばれる軟骨のズレや変形が原因で,引っかかったり乗り越えたりする際に音が生じます。『カクン』と表現されることが多いです。口の開け閉めで鳴る場合や,口を開けたときのみ,もしくは閉じるときのみ鳴る場合もあります。別の原因では,あごの骨の変形が起きた際に擦れたような音が鳴ることがあります。『ジャリジャリ』『ガリガリ』と感じることが多いようです。

自覚症状が関節雑音のみで,痛みや開口障害による日常生活の制限がない場合には,治療の対象とならないこともあります。

【患者様の主な症状】

  • あくびをするとカクンと音がする
  • 食事中にあごからガリガリとした音が聞こえる
  • 口を開けると引っかかったような感覚があり,音が鳴ると開けやすくなる

顎関節症の原因と,やってはいけないこと

顎関節症の原因とは

顎関節症の原因はひとつではありません。顎関節症は多因子性の疾患であり,様々な要因が積み重なって発症すると考えられています。様々な要因によってコップに水が注がれていき,水が溢れたときに自覚症状が出るイメージです。どの要因で水が注がれていくか,コップの大きさも人それぞれ異なります。

顎関節症の主な原因としては,

  1. 悪習癖
  2. ストレス
  3. 不良姿勢
  4.  噛み合わせ
  5. 顎への負担

に分類できると言われており,具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 日中の作業中や集中しているときの噛みしめや食いしばり
  • 夜間の歯ぎしり
  • 口を大きく開ける動作をした 食事中に硬い物を噛んだ
  • 食事の際,左右どちらか一方のみで噛み続ける
  • 歯の治療で噛み合わせが変化した
  • 頬杖 横向きやうつ伏せで寝る 姿勢が悪い
  • 事故などで,あごに直接衝撃を受けた
  • 仕事や勉強によるストレスや不安
  • うつ 不安障害 睡眠障害

顎関節症の方がやってはいけないこと

顎関節症と診断されたときや,自分が顎関節症かもと思った際にやってはいけないことやできるだけ避けた方が良いことについて解説します。

顎関節症の痛みや開口障害の病態としては,筋肉痛や捻挫が近いとされています。そのため,安静にして負担を減らすことがとても重要です。負担を増やすような以下の行為を避けることで,症状の悪化を防ぎ,治療の効果を高めることができます。

  • 無理な口の開け閉めを避ける 痛みを我慢してまで口を開けない
  • 日中の食いしばりを意識してやめる
  • 硬い物を噛まないようにする ガムを噛まない
  • 歌や楽器の練習を避ける
  • あごを圧迫しない(頬杖,横向け寝)
  • ストレスを溜め込まないようにする
  • 自己判断で治療しない

顎関節症で何科に行くか迷った際に,歯科に受診するべき理由

顎関節症かなと思ったら,まず歯科医院を受診しましょう。

整形外科や接骨院などを受診される方もいらっしゃいますが,顎関節症の治療は歯科医院でのみ行うことができます。顎関節症の治療で歯科医院を受診するべき理由は以下の通りです。

● 専門的な知識があり,噛み合わせの診断やアプローチができる

顎関節症については,歯科医師の国家試験に出題されることがあります。そのため,歯科医師であればほとんど全員が顎関節症についての基礎知識があると言えるでしょう。

また顎関節症の診断や治療には噛み合わせに対するアプローチがとても重要です。整形外科医や整体,カイロプラクティック,接骨院では,関節や筋肉に対する症状緩和は行えても,噛み合わせの診断や治療を行うことができません。噛み合わせのバランスと整えるマウスピースも歯科医院でのみ作ることができます。正確な診断のためにも,歯科医院を受診するようにしましょう。

● 他の病気との鑑別ができる

顎関節症の症状である痛みや開口障害は,顎関節症以外の原因でも起こることがあります。例えば,顎関節や筋肉に発生していると思っていた痛みが,実は虫歯の痛みが原因だということもあります。この虫歯や歯周病,あごの骨の炎症については歯科医院でレントゲンを撮影することで分かります。また,同様に歯やあごの炎症の波及が原因で口が開けづらくなることもあります。

実際,私(当院院長)が大学病院で勤務していた際に,顎関節症で口が開かないからと紹介された患者様が,実は親知らずの炎症が原因であり,そのまま入院になったこともありました。また顎関節症の痛みだと思っていたら,脳腫瘍だったケースもあります。他の重大な病気を見逃さないためにも,歯科医院での診断が重要です。

歯科医師であれば最低限の知識があると述べましたが,正確な診断や治療方針の決定についてはより専門的な知識が必要です。可能であれば,顎関節症の専門医がいる病院やクリニックを選ぶようにしましょう。もしお近くにいない場合は口腔外科に詳しい歯科医師でも良いと思います。

まとめ

いかがでしょうか。今回は顎関節症の原因ややってはいけないこと,何科か迷った際に歯科に通うべき理由について解説しました。

顎関節は会話や食事のたびに動かす必要があり,一日に何度も複雑な動きを行っています。そのため知らず知らずのうちに負担や疲労を溜め込んでしまうことがあります。また顎関節症は10~30代の比較的若い年齢に多いと言われていますが,50-60代でも発症することが少なくありません。また顎関節症を悪化させないというだけでなく,他の重大な疾患を見逃さないためにも,あごについて気になることがあれば,ぜひお気軽にご相談ください。

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